【障がい児を育てながら働く⑧】「この小学校なら、娘も大丈夫」と確信。私立特別支援学校「愛育学園」との出会い
「娘は机に座って教科書を開いたり、字を習ったりするような発達段階にありませんでしたが、愛育学園なら安心して過ごし、伸びるかもしれない。この学校なら、"初めて"が苦手な娘を体験に連れてきても大丈夫そうだと、確信しました」 【過去セミナー動画】「障がい児を育てながら働く綱渡りの毎日」「取り残される障がい児・医療的ケア児の親たち」 ***** 「障がい児及び医療的ケア児を育てる親の会」という団体をご存じでしょうか? この会では、障がい児や医療的ケア児を育てながら、働き続けたい親たちが、ゆるやかにつながり、支え合っています。 障がい児や、医療的ケア児を育てながら働こうとする親の前には、両立を続けるためのハードルが幾重にも立ちはだかっています。子どもや家族の暮らしを守るため、この団体は行政や勤め先への働きかけを続けています。ケアの必要な子を育てている親も働き続けることができるよう、育児・介護支援制度を子の年齢で区切らず、障がいや疾患の状態に応じて配慮してもらえるよう、社会を変えようとしているのです。 この会の会長であり、朝日新聞社に勤めながら、重度の知的障がいを伴う重い自閉症の16歳の娘さんを育てていらっしゃる工藤さほさんへのインタビュー、第8回です。 ―― 娘さんがまだ3歳のときに、区の教育相談に行ったんですよね 娘とその妹、2人分の産休と育休などを使い、しばらく会社を休んでいました。でも、どんな制度を使っても、休み続けられるのは娘が4歳の3月まで。4月から復職しなかった場合、会社を辞めなければなりませんでした。 仕事はなんとしても続けなければ……そう思い、4歳児クラスから入れる保育園を探すのと同時に、小学校も探していたんです。
復職したら、平日にあちこちの小学校へ見学に行くようなことはできなくなりますから……。 当時、娘はまだ3歳でしたが、教室にじっとしているようなことが苦手。通うことができる学校はあるのかと、心配は膨らむばかりでした。 そんな中、教育委員会の職員の方に「お嬢さんに合っていそう」と紹介された私立の小学校を訪ねたんです。 ―― それが、私立特別支援学校愛育学園だったのですね。 私立特別支援学校愛育学園は、東京都港区の愛育クリニック(旧愛育病院)と愛育幼稚園の間にあるある小さな学校(幼稚部・小学部のみ)です。 教頭先生がニコニコしながら、私の話を丁寧に聞き取ってくださり、校内を案内してくださいました。 教室はあるようでなく、廊下も校庭もすべてが教室。子どもたちは思い思いに、好きな場所で満たされた表情で、自らのやりたいことに向かって取り組んでいました。 ホールの中央には娘の大好きなトランポリンが置いてあります。慈愛に満ちたまなざしの、口髭をたくわえた初老の男性の先生が、肢体不自由の子を抱きかかえ「跳ぶのが好きなんだよね」と語りかけながら、ふわりふわりと跳んでいました。 それが校長先生でした。 ―― 教室で椅子に座って授業を受ける、一般的な小学校とは、だいぶ様子が違うようですね。 娘のように「水」が好きな子が多いようで、広い浴室がありました。 「かつて、小学4年近くまで浴室にこもって水遊びをしながら過ごしていたお子さんもいました」と教頭先生が教えてくださいました。喘息もあったというそのお子さんは、湯気にあたっていると楽だったのでしょう。自分で「もう大丈夫」と思ったころあいに、自ら浴室から出てきて、外で遊ぶようになったそうです。
工藤 さほ