微妙な今年の阪神…タイガースOB&虎番記者が激論 「岡田カントク、ホンマにアレンパできますか?」
「いろいろずっと考えてたんや、お~ん。3番打つヤツの打率が悪すぎるんよな、誰が打っても3番アカンねん」 【画像多数】岡田監督に「とにかく、打てない」…とボヤかれた選手たち 5月12日のDeNA戦で3カードぶりの勝ち越しを決め、首位に返り咲いた阪神の岡田彰布監督(66)は試合後、報道陣に対してこうボヤいた。 とにかく、打てない――。 「どんでんマジック」で列島に熱狂の渦を巻き起こし、38年ぶりの日本一に導いた虎の名将は、悩んでいた。開幕から3番で起用していた2年目スラッガー・森下翔太(23)の打率は.230 前後を行ったり来たり。チームはなんとか守っていた首位の座を、11日に新生・阿部ジャイアンツへ明け渡した。翌12日に岡田監督が苦肉の策として新たな3番に据えたのがリードオフマンの近本光司(29)だったが……4打数0安打に終わった。 「近本な。前から言うとったんや。2番中野(拓夢・27)、3番近本っていうな。そんな、去年と同じ形じゃできへんで」 2位・広島に10ゲーム以上の差をつけて圧勝した昨年の「近本、中野の1、2番が出てクリーンナップで返す」というパターンがほとんど作れず、阪神は苦境に立たされている。 「打てていないのは森下だけではない。4番を打つ大山悠輔(29)の打率も2割台前半、佐藤輝明(25)に至っては2割に届くのがやっとで、スタメン落ちの屈辱を味わっています。クリーンナップがここまで不甲斐ないと、チームの士気に影響する。チーム打率は.229 でリーグワースト2位(数字は5月12日時点、以下同)。ロースコアの試合が続けば、投手陣にも負担がかかるでしょう。正直、首位に立てているのが不思議なくらいです」(スポーツ紙虎番記者のA氏) 阪神は、″偶然に″首位争いを演じることができているのか? あるいは、必然なのか? 果たして、「アレンパ」は、可能なのか? 球団関係者やOB、虎番記者たちに本音を聞いた。 ◆大山が打てば打線も上向く 「4番が奮起しないと、昨年のようにはいかない!」 大山に活を入れるのは、阪神OBで野手チーフコーチを務めた岡義朗氏だ。 「やはり近本は1番で固定するべき。近本が出てかき回し、大山が返す。あるいは、8番の木浪聖也(29)が出て、9番で送り、近本で返す。中野が繋いでクリーンナップに回し、ビッグイニングに……。これが″強い阪神″の理想形です。現在、4番が打てていないから、3番、5番が『俺が打たないと』と力んでしまっている。大山が打ち始めれば、佐藤も森下も精神的に楽になる。そうすれば近本に安心して1番を任せられますし、打線に繋がりが出てくる」 そもそも、阪神はなぜ貧打に苦しんでいるのだろうか。’22年まで阪神で投手コーチを務めた金村曉氏はこう話す。 「今年の阪神野手陣は、昨年とほぼ同じメンバーで戦っている。日本一に輝いたことで昨オフ、主力選手は在阪局を中心に様々なメディアに引っ張りダコでした。いつもとは違う忙しさを経験した上、長年蓄積されてきた疲労も相まって、コンディションの調整に苦しんでいるようです。大山も古傷が再発したのか、オープン戦では下半身のハリを訴えて欠場。開幕には無理やり間に合わせた形になりました。野手はスタートでつまずくと不振が続いてしまいがちなんです」 マスクを被る梅野隆太郎(32・打率.125 )と坂本誠志郎(30・打率.220 )はどちらもディフェンス面に定評はあるが、打席での存在感に乏しい。 それでも阪神が首位に立てているのには、ワケがある。キーワードは長打力とフォアボールだ。 「昨年、岡田監督は『フォアボールと単打を同じプラス査定に』と打ち出したことで、四球獲得数を増やすことに成功。今年もその影響か、セ・リーグの四球ランキングトップ10のうち、3位に近本と大山(19個)、6位に森下(16個)、10位に中野(14個)がランクインしています。 そして昨年、リーグワースト2位だった本塁打数がヤクルトに次ぐリーグ2位の21本と増えているのです。長打を狙って強振することが打率の低下に繋がっているという見方もできますが……。出塁率の高さに、昨年にはなかった長打力が加わり、全体の得点数はリーグ2位の117点。効率が非常にいい。ただ、昨年も失策数で最下位だった守備は、今季も22でワーストと改善されていない。甲子園は黒土で守りにくいとはいえ、寂しい数字です」(全国紙運動部虎番記者のB氏) ◆投打のキーマンは…… 対して、昨年リーグ1位となるチーム防御率2.66を叩き出した投手陣は、今年も好調だ。ここまで2.25でトップに立つなど、岡田監督の信頼は厚い。 「今シーズンはとにかく才木浩人(25)がノっていますね。MAX153㎞/hのスピンが利いた球威抜群の直球に、ともに被打率.103 のスライダーとフォークを組み合わせる圧巻の投球を続け、ここまで4勝1敗、防御率1.60の好成績を残しています。12日のDeNA戦も、前日に7点差をひっくり返されて2位に転落した悪いムードを吹き飛ばす快投。 一方で気の毒なのが、昨年新人王、最優秀防御率、シーズンMVPなどのタイトルを獲得した村上頌樹(25)。今年も安定感のある投球で、防御率は0.88と才木を上回る。しかし、打線の援護に恵まれずここまで2勝2敗です。打線が上向けば、順調に勝ち星を伸ばしていくでしょう。才木、村上という右の二枚看板がどこまで貯金を作れるか、今から楽しみです」(キー局スポーツ番組担当のC氏) 若き右腕が活躍する中、波に乗れていないのがベテラン右腕コンビだ。 「西勇輝(33)は規定未到達ながら4試合を投げて防御率1.27と好投しているのに、いまだ0勝1敗。周囲からは『西さんこのままだとパワプロ(プロ野球ゲーム)で″負け運″の査定つくで(笑)』なんてイジられる始末のようです。 岡田監督に2年連続で開幕投手を任された青柳晃洋(30)も1勝2敗、防御率は3.34と不安定。これではチームに勢いがつきません」(前出・A氏) 前出の岡氏は、西、青柳の両右腕が「投線」を構築する上で重要な存在だと話す。 「村上や才木がカード頭で投げて勝っても、2戦目の投手が負けると流れが悪くなる。そこで経験豊富な西と青柳が抑えれば、カード勝ち越しが増える。打線と一緒で、先発ローテにも線があるんです」 伊藤将司(28)、大竹耕太郎(28)という昨季2ケタ勝利を挙げた左腕コンビも、本調子とは程遠い。伊藤はここまで防御率4.26と期待に応えられず二軍降格。大竹も3.82で、それぞれ1つずつ貯金を作っているものの、昨季の輝きを失っている。 盤石とは言えない先発陣を支えているのが、12球団最強と称される強力中継ぎ陣なのだが――思わぬ誤算があったという。金村氏が続ける。 「昨季防御率が1点台前半だった石井大智(26)が開幕から打たれたり、昨季50登板の岩貞祐太(32)、侍ジャパンにも選出された湯浅京己(24)は調子が上がらず二軍調整中と、想定外のトラブルが多すぎる。それでも桐敷拓馬(24)や島本浩也(31)、現役ドラフトで獲った漆原大晟(27)、浜地真澄(25)らを岡田監督は上手くやりくりしていますが、″誤算″が今後どう転ぶかは、未知数です」 すでに影響が出ているという声も。 「11日のDeNA戦で蝦名達夫(26)、筒香嘉智(32)に相次いで被弾したように、クローザーの岩崎優(32)が打たれるシーンが目立ってきました。理由は明確で、明らかに″投げすぎ″です。昨季60登板の鉄腕と言えど、36試合で17回も登板すれば疲労は溜まる。 今季、ほぼ唯一の新戦力であるゲラ(28)が加入したことによって、ベテランの域に差し掛かった岩崎の負担は減るはずでした。ところが、セットアッパーの相次ぐ離脱で登板数は膨れ上がった。ゲラが18登板ですから、毎試合どちらかが投げている計算です。2人で140試合登板ペースでは、どちらかが壊れてしまう」(球団関係者のD氏) なんとか首位争いを繰り広げているものの、不安要素の多い阪神。岡田監督は、チームにどんな魔法をかけるのか。「打」のキーマンは2人の若手だ。 「岡田監督は大局を見て、流れを変える一手を打つ。例えば、小幡竜平(23)を木浪の代わりに起用する。そこで小幡がマルチヒットを放っても、『本来のレギュラーは木浪や』と、2試合後には木浪を戻す。すると今度はハッパをかけられた木浪が打ち始める。上手く競争意識を持たせ、それが結果としてチームの勝利をもたらす。下位打線が機能すれば、上位打線の状態も上がります」(前出・岡氏) そんな岡田監督が上位打線に打った次なる一手が、履正社高校出身のスラッガー候補・井上広大(22)の起用だ。 「5月10日に昇格後、即スタメンで出場し、3連戦で12打数4安打の活躍。レギュラーと控えの差が他よりも大きい印象の阪神で、二軍から上がってきた若手が上位で活躍したことが、チームにとっていい起爆剤になっている。 投手で言えば、先発陣の疲労がたまってくる6~7月くらいに、門別啓人(19)や高橋遥人(28)が救世主になると思います。今年のキャンプで高橋を見ましたが、やはりとてつもないボールを投げる選手です」(前出・金村氏) 岩崎ら自慢のリリーフ陣が1イニング3発も被弾して大逆転負けを喫した翌日の試合、井上はトップバッターとして先発。唯一の得点に絡むヒットを放ち、連敗阻止とカード勝ち越しに貢献した。 昨年は5月に貯金を14個増やし、8月に11個増やした阪神だが、今年はそう上手くはいかなそうだ。 「今年はどの球団も″阪神包囲網″を敷いてエースをぶつけてくるでしょうし、独走は難しいはず。6球団が団子状態で最終コーナーまでもつれ込んで、最後の最後で1勝を掴んだところが……。そんなシーズンになると思います」(同前) 「アレンパ」は、「アレ」よりも難しい。ただ、岡田監督ならソレを達成してしまいそう――そんな気がするのは本誌だけだろうか。 『FRIDAY』2024年5月31日号より
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