先日、いとこが「18歳」から年金の保険料を払っていると聞いて驚きました。収入があると「20歳前」から払うものなのでしょうか?
国民年金と厚生年金の主な違い 筆者作成
10代から年金保険料を支払うと、将来どれくらい年金は増える?
それでは10代から厚生年金に加入し保険料を支払うと、将来もらえる年金額はどれくらい増えるのでしょうか。わかりやすくするため、働いている期間の年収が300万円の人が、高校を卒業した18歳から働いた場合と、大学卒業後の22歳から働いた場合で考えてみましょう。 まず、国民年金に関しては、どちらも20歳から60歳まで40年間支払うと想定すれば、受給額に差は生じません。一方、厚生年金に関しては、18歳から働いた人と大学卒業後の22歳から働いた人では、加入期間に4年、月に直すと48ヶ月の違いがあります。 厚生年金の報酬比例部分の年金額は「平均標準報酬額×5.481÷1000×厚生年金加入月数」で算出しますが、年収300万円の平均標準報酬額は「300万円÷12ヶ月=25万円」と想定可能です。 その結果、4年長く働いて増える厚生年金報酬比例部分の年金額は「25万円×5.481÷1000×48ヶ月=約6万6600円」となり、月額に直すと約5500円受給額がアップします。
厚生年金は加入期間と報酬額で変わることに注意
厚生年金は長く働くことで加入期間が伸びるため、年金受給額の増加につながります。しかし、厚生年金は加入期間だけでなく、報酬に比例する形で保険料を収めるため、年収の多寡によっても、年金受給額が上下します。 そのため18歳から働いた人と、大学卒業後の22歳以降に就職した人の比較でも、最終学歴の違いなどによる年収の差で受給額が逆転することがあります。 厚生労働省の「令和5年賃金構造基本調査」による学歴別の賃金を見ると、高校卒は平均281万9000円、大学卒で平均369万4000円となっており、その差は87万5000円です。この年収差を例に、厚生年金の報酬比例部分の受給額を比較してみましょう。 まず、年収300万円の人が、高校卒業後の18歳から60歳まで42年間働いた場合の受給額は、平均標準報酬額が25万円のため「25万円×5.481÷1000×504ヶ月=約69万円」です。 一方、大学を卒業し、年収が387万5000円(300万円+87万5000円)に増えた人は平均標準報酬額が「387万5000円÷12ヶ月=約32万2000円」となります。22歳から60歳まで38年間働いた場合の受給額は「32万2000円×5.481÷1000×456ヶ月=約80万4000円」です。 このように厚生年金に関しては、年収の違いによって、加入期間が短い人の方が受給額の多いケースがあることも理解しておきましょう。
まとめ
年金は20歳からというイメージがありますが、10代でも会社で働くと、厚生年金の保険料を支払うことになります。 ただ、厚生年金は、加入期間によって受給額が一定の国民年金とは異なり、働いた期間と収入によって受給額が変わります。国民年金と厚生年金の違いなど、年金制度をよく理解した上で、これからの働き方を考えてみてはいかがでしょうか。 出典 日本年金機構 公的年金制度の種類と加入する制度 日本年金機構 は行 報酬比例部分 厚生労働省 令和5年賃金構造基本統計調査 結果の概況 執筆者:松尾知真 FP2級
ファイナンシャルフィールド編集部