「高額案件」だけではなかった…ECサイト「Temu」が日本進出で筆者に寄せた「相談」の中身
中国発のECサイト「Temu」が日本で破竹の勢いをみせている。家電や衣類、コスメや家具などあらゆる分野で文字通り「価格破壊」を起こしているが、品質や決済面でのセキュリティなど、疑問に挙がる部分も少なくない。SNSでは、YouTuberへのいわゆる「商品レビュー案件」が明るみに出た結果、サイト自体の社会的信用に関しても議論されるようになった。 【写真】ベトナムやインドネシアでは…日本人が知らない「Temu」への対応 現地で中国経済トレンドをウォッチする吉川真人氏は、Temuが日本進出するにあたって担当者から「相談」を受けたという。その内容とはーー。
全世代に浸透するTemu
今年6月、日本に一時帰国した際に、京都宇治の黄檗山萬福寺を訪れた。ここは中国語でお経を唱えることで有名な禅寺で、私も以前から行きたいと思っていた場所だ。 壮大な中国様式の建築と異国情緒が漂う空間に圧倒されるばかりで、訪れると日本の中にいながらも、どこか中国文化に触れたような感覚を覚える。その黄檗山でお寺の住職であり、アーティストとしても活動している70代の和尚さんと話す機会を得た。 彼はインスタグラムなどのSNSも駆使し、中国の仏教界のイベントにも招待されるほど、現代のデジタル文化にも精通しており、柔軟な姿勢に驚かされた。その上、さらに意外だったのは、彼が中国発の越境ECアプリ「Temu」を頻繁に利用しているという話だ。 アトリエの家具や照明器具はほとんどTemuで揃えたと言い、「なんといっても安いからね」と笑って話していた。70代の伝統的な仏教僧である彼がTemuのようなプラットフォームを使いこなしていることは、Temuの影響力が世代を超えて広がっていることを実感した。 筆者の母も、調理器具をTemuで購入している。物価高の日本では「安くてなんぼ」の価値観が強い関西では、年齢を問わず多くの人がTemuの低価格に魅力を感じている様子だった。たまに不良品が混ざっているとわかっているものの、母は「安いから許容範囲内」だという。 この出来事をきっかけに、筆者はTemuがいかにしてアジア市場で影響力を広げているのか、その急成長の秘密についてさらに関心を持つようになった。