<古畑任三郎>が鹿賀丈史“中川”の職業を見抜いた酢豚弁当…「殺人特急」レビュー
三谷幸喜脚本の「古畑任三郎」シリーズは、田村正和演じる主人公・古畑任三郎が、完全犯罪をもくろむ犯人たちの難解なトリックを卓越した推理力で解いていく、ミステリードラマの金字塔。FOD・TVerでは「#ドラ活 浸れ、超自分的ドラマ生活。」を開催中で、第1シリーズの「警部補・古畑任三郎」第1~3話は7月6日(土)まで無料公開されている。鹿賀丈史が医師の犯人役を演じた第8話を紹介する。(以下、ネタバレが含まれます) 【写真】「古畑任三郎 第3シリーズ」(左から)石井正則、田村正和、西村まさ彦 ■殺害した事実を隠して病死を匂わせる外科医師VS古畑 第8話「殺人特急」は、特急列車内で二人の男が話し合うシーンから始まる。浮気中の女性との関係を興信所の所長・宍戸(河原さぶ)につかまれ、証拠写真まで撮られた外科医・中川純一(鹿賀丈史)。宍戸は、依頼主である中川の妻にすべてを明かすという。説得しても聞き入れない宍戸を座席で殺した中川は、証拠のフィルムが隠されているらしいコートを奪って自分の席に戻った。 車掌が宍戸の死に気付く。古畑(田村)は、車内に居合わせた医師として中川に協力を求める。何食わぬ顔をして古畑の捜査に協力する中川は、心臓発作による病死を匂わせる。虚々実々の駆け引き。だが、古畑の鋭い観察力と推理が、中川の仮面をはいでいく。そして古畑は、ある実験を試みる。 ■食べ終わった駅弁の結び目を見てピンと来た古畑 この回の古畑は、特急車内に偶然居合わせた警部補というシチュエーションのため、次の駅までに犯人特定を急ぐスピーディーさも求められ、普段以上に真剣な表情や焦る様子などが渋く、カッコいい。車掌に「何かあったの? 警察の者だ」と話しかけ、死体を発見した場面から、“車内で食べるみかんは手に匂いが残ること”や、“リクライニングシートを後ろに下げる際にコワい反社会的男性が座っていて遠慮せざるを得ない”、“駅弁”など“電車あるある”をたくさん使ったトリックの数々が楽しめる。 細かい内容すべては書き記せないが“駅弁”だけ解説しよう。 古畑の好物は酢豚である。それは車内の売店で「ないなぁ! 酢豚弁当が欲しいんだけどなぁ」「酢豚どれ? 君たち知らないの? 有名な酢豚弁当」と珍しく店員に声を荒げる古畑の姿を見ても明確だ。酢豚に対する熱い思いは他の回でも時折語られるほどである。今回中川を「お医者様でいらっしゃいますよね?」と職業を見抜いて追い込んでいったのは、中川が食べ終わったスタミナ酢豚弁当の包みに古畑が着目したことからだった。「一番上の兄が京大付属病院で医者をやってまして」と外科医特有のヒモの結び方を指摘。「医師ならば3分間で(殺したい相手を)クロロホルムで眠らせて、くるぶしに注射をして、コートを脱がせることが可能ですか?」と殺害行為の実証を試す実験に中川を参加させたのだ。 古畑は女性の犯人には終始紳士的な捜査をするが、男性には手厳しく容赦しないところがある。第8話は切れ味鋭い古畑の推理を堪能できることだろう。