<掛布が語る>横浜DeNA・中村紀洋はFBなど使わず大人の対応を
もし安藤監督が、そういうコミュニケーションをとらない人であれば、中村選手のように不満を抱えていたのかもしれない。当時、私も全盛期だったので4番のプライドもあった。「走ったところで一塁を空ければ歩かされる」、「動かれると打席に集中がしにくい」という違和感がなかったわけでもない。絶対的に信頼すべき4番がいるならば、あえて動かず「走るな!」のサインを出すこともチームの選択肢としてはあると思う。だが、4番に、そこまでの信頼がなく、チーム方針として「勝つためには、おまえの打席でも動くよ」ということであれば、その状況に応じた責任あるバッティングを心がけなければならない。それが勝利を目指す組織であり、チームであり、4番の仕事である。 ■勝つために4番の仕事とは何か? 中村選手も「このチームが勝つための4番の仕事とは何か」をもっと熟考すべきだったのだ。今季に関して言えば、中村選手は、自分で勝ち取った4番ではない。ブランコの故障で押し出されて座った4番である。中村選手が、彼の全盛期のように40本以上の本塁打を打つバッターであれば、「俺の打席では動くな」と主張しても間違いではなかったのだろうが、今は、そこまでの信頼感がないため、首脳陣も、たとえ、中村選手の打席であっても「動く」「揺さぶる」というチーム方針を変えなかったのだろう。彼ほどの経験者ならば、おのずと、そういうチーム方針を理解して、コーチに相談という形で、「俺が打席のときは動かないで欲しい」と首脳陣に伝える前に、「走者が動く状況であっても、1打席、1打席、集中して結果を出すだけだ」と、気持ちを切り替えるべきであった。 ■指揮官としての配慮も必要だった また中畑監督にも、問題がなかったわけでもない。試合後、中村選手の処遇についてメディアからコメントを求められたとき「懲罰」という言葉を使ったと報道されている。中村選手本人と、話し合いを持ったが、彼が納得をしなかったため、中畑監督にも言い分はあったのだろうが、こういうマスコミへの語り口は、避けるべきだったと思う。中村選手が、フェイスブックに暴露したやり方も間違っているが、その引き金になったのが、この発言だとすれば、もう少し指揮官としての配慮も必要だったのかもしれない。