長野県が淫行条例案を提案へ 知事「子どもたちが性被害に苦しんでいる」
長野県の阿部守一知事は1日、青少年との性行為を処罰する淫行処罰条例案を16日開会の県会6月定例会に提案する方針を明らかにしました。阿部知事は「条例制定を求める声は多く、性被害に苦しんでいる子どもがいることと併せ、先延ばしできない」と強調。これに対し冤罪のおそれや、条例によらない県民運動の尊重を主張する意見も根強く、県会での議論が注目されます。 【写真】淫行条例化で続く議論 誇りだった「県民運動」見直しの是非は?
公募の意見でも「肯定的意見多かった」
長野県は青少年の性被害防止などで全国唯一条例を持たず、県民運動で取り組んできました。歴代知事もこの方針を支持してきました。 阿部知事はこの日の会見で「3年かけて専門家の意見を聞き、県民との対話を重ねてきた。子どもの性被害は(その影響が)長期にわたるもので重大だ」と述べ、「パブリックコメント(公募の意見)などで条例制定に肯定的、積極的な声を多数頂いた」と強調。 また「条例を持たずに来た長野県にとっては大きな転換になるが、取り組んでいきたい」と、長野県の青少年対策の大きな方針変更であるとの認識も示しました。 「青少年の性被害は顕著には増えていないとの指摘もある」と条例化の根拠が十分なのか問われると、「仮に減少に転じているとして、だから条例は要らないということにはならない。仮に1人でも被害があれば対応することが重要だ」と反論しました。 「条例が冤罪や恣意的な捜査を招くおそれはないか」との質問には、「犯罪の構成要件を明確にするよう取り組んできた。(捜査の過程で)国民の権利を侵害しないよう配慮するといった規定も盛り込んだ。(条例のある)他県で冤罪が多発していることはない。冤罪になるおそれがあるからと犯罪を処罰しないのは本末転倒だ」と述べました。 さらに「冤罪のおそれがあるから殺人罪もなくせというようなことにはならない。もしそうなればすべての(犯罪の)罰則規定がそういうことになってしまう」と独自の見解を述べました。
不明確な「困惑させる」定義に懸念の声
これまでの条例の骨子案では、18歳未満の子どもを困惑などさせて性行為やわいせつな行為を行ってはならないとしていますが、「困惑」について「不明確で、大人と18歳未満とのまじめな恋愛についても18歳未満が困惑していたという理由で摘発され、冤罪になるおそれがある」「恋愛に捜査が関与することになる」などの問題点が指摘されています。 これについて阿部知事は「困惑させることは罰則対象になる言葉として使われている。精神的に自由な判断ができない状態の子どもへの性行為であり、より厳しい対応を求める意見も寄せられている。(この条項は)県民の理解を得られると思う」と答えました。 県はこの日、すでに公表した条例骨子案に寄せられた県民のパブリックコメント191件を公表。阿部知事は「条例によらずに来た県なので慎重論が出ると思ったが、実際には条例化に積極的な意見が多かった」と話していました。