年を重ねて骨が強くなる人はいない…骨粗しょう症になりやすい7大「生活習慣病」の恐怖
女性であろうが男性であろうが
(6)サルコペニア、フレイル、認知症 サルコペニア(加齢による筋肉量の減少および筋力の低下)と判定された高齢者の57.3%が骨粗しょう症だったという報告が国内外からなされています。また、サルコペニアにともなう筋肉量の減少・筋力低下・バランス機能低下は、骨折の直接的原因となる転倒の発生に大きく関与しており、骨の強度を低下させ、骨粗しょう症性骨折につながるとも考えられています。 フレイルは、健康な状態と介護が必要な状態との中間地点にある状態で、病名ではありません。加齢や疾患によって身体的・精神的なさまざまな機能が徐々に衰え、心身のストレスに脆弱になった状態を指します。病気ではないものの、フレイルの高齢者は、健常な高齢者と比較して、転倒リスクや骨折リスクが高いことがわかっています。 そして認知症は、女性に多い、性ホルモンの減少、糖尿病、喫煙・飲酒などの危険因子が骨粗しょう症と共通しています。 認知症の中でも患者数が最も多いアルツハイマー型認知症患者では、大腿骨近位部の骨密度が低下し、骨折頻度が2.1~2.8倍も高いという報告があります。認知症の高齢者は、そうではない高齢者と比較して転倒リスクが2倍以上も高い上に、治療後も以前のように動けなくなるほどQOL(生活の質)が大きく低下してしまう可能性があります。 (7)男性更年期障害(加齢性腺機能低下症、LOH症候群)とは 男性は50~60代以降は、男性ホルモンであるテストステロンが年1%ずつ減っていき、いわゆる男性更年期障害を発症することがあります。更年期障害は女性特有と思われがちですが、男性も性ホルモンの低下やバランスの乱れにともなう不調が起こり得ます。 骨粗しょう症は性ホルモンの減少によって引き起こされるものですから、当然、男性も骨が弱くなります。自然に年齢を重ねれば、性ホルモンは必ず減少するので、骨も必ず弱くなります。 女性であろうが男性であろうが、強くなる人はいないと肝に銘じ、備えなくてはなりません。
---------- 斎藤充(さいとう みつる) 1992年、東京慈恵会医科大学卒。2020年より現職。日本骨代謝学会理事、日本骨粗鬆症学会理事、日本人工関節学会理事などを兼務。骨代謝の診断・治療・研究で国内外を牽引する。 ----------
斎藤充