バランス運用でカテゴリートップの運用力、「ポラリス」にある類まれなスタビライザーの真価
ピクテ・ジャパンが設定・運用する「ピクテ・ゴールデン・リスクプレミアム・ファンド(愛称:ポラリス)」は、2024年9月末時点の3年(年率)トータルリターンが14.43%と、ウエルスアドバイザーが分類する「バランス/安定運用」カテゴリー302本中でトップの運用成績になっている。リスク当たりのリターンをみるシャープレシオも3年で1.66とカテゴリーでトップの成績であり、非常に優れた運用成績を残している。同ファンドの運用責任者であるピクテ・ジャパン運用本部副本部長であるスティーブ・ドンゼ氏(写真)に、ファンドの運用戦略について聞いた。 ――「ポラリス」は、世界の様々な資産クラスに投資して魅力的なリスクプレミアム(リスクのある資産の期待収益率からリスクのない資産の期待収益率を引いた差)の獲得をめざすファンドですが、期待するファンドのリスク・リターンの水準は? 「ポラリス」は、株式と債券にゴールド(金)を加えた運用をしております。ポートフォリオに期待するリターンの水準は具体的な目標はありませんが、株式に近いリターンを、より低いリスクで実現することをめざしています。この運用成果を実現するために、資産配分をダイナミックに変更します。また、ゴールドを加えることによって株式と債券のバランス・ポートフォリオよりも優れたリスク管理ができていると思っています。 ただし、「ポラリス」は一般的なバランスファンドと比較して、リスクは比較的高い商品性になっています。当ファンドは、投資家の皆様に比較的高いリスク許容度を求め、時に忍耐を必要とするファンドになる場合もあります。 ――「ポラリス」のポートフォリオでは「金」への投資が特徴的です。2024年になってNY金先物価格は史上最高値を連続で更新するなど、大きく金価格は上昇しました。金価格は値上がりし過ぎではありませんか? ゴールドは、いまだにアンダーバリュー(割安)であると考え、配分比率を高く保持しています。ゴールドには債券の持つネガティブな要素が少なく、株式のリスクを分散する手段として優れていると考えています。特に、インフレや地政学リスクにおける株価の下落をカバーする効果は大きいです。たとえば、オイルショックの時には債券は株式のリスクヘッジ手段としての効果がありませんでしたが、ゴールドは完璧なカバーを行うことができました。 また、主要国において債券の発行が急増していますが、ゴールドの新規供給量は限定的ですので、需給バランスの面で債券よりもゴールドの価値が高くなっていると考えています。 過去2年間を振り返ると、ウクライナ危機で各国の中央銀行は外貨準備で米ドル債を売却してゴールドを積み増すという動きを進めました。中東問題も含めて地政学リスクは世界の各地に存在し、ゴールドに対する需要は強い状態が続いています。 急速に高まっていたインフレ率が低下することによって、実質金利が上昇したため金の価格は一時弱くなっていましたが、欧米の主要国が利下げを開始したことで実質金利が低下してゴールドに対する需要が戻ってきています。今後、一段と利下げが続くことが考えられ、ゴールドに対しては強気が維持できる環境だと考えています。 ――2023年から債券への投資を増やしている理由は? 「ポラリス」は、その時々の金利水準に応じて投資魅力度が高い資産をみつけることに注力しています。世界的に金利水準が上がって債券投資の魅力が高まっています。 現在のポートフォリオでは、世界の公益株、新興国の高配当株、アメリカのハイ・イールド債券、グローバルな投資適格社債、新興国債券など、株式や債券の投資でも利回りが期待できる資産を保有しています。 今後、金利水準が低下していけば、ゴールドへの投資比率を引き上げることも選択肢になると考えています。 ――ゴールドが魅力的な資産であるのならば、ゴールドだけで運用すると、より高いリターンが得られるのではないでしょうか? 株式や債券から得られる値上がり益や利息配当収入を獲得することがファンドの基本的なリターンの源泉になります。ゴールドに期待される役割は「スタビライザー(不規則で不要な揺れを抑える装置)」です。特に株式のリスクを抑える機能に優れています。 たとえば、考慮すべきリスクである「成長鈍化」「インフレ率の低下」「量的金融緩和」「地政学リスク」「多額の財政赤字」などの要因に対して、債券は「成長鈍化」や「量的緩和」など一部のリスクのヘッジ手段になりますが、ゴールドは「インフレ率の低下」を除くより多くの局面でリスクヘッジの効果があります。 ――市場の変動要因として、もっとも注意を払っていることは何ですか? インフレの再燃がないか注視しています。可能性は低いと考えていますが、インフレ率が再び高まると、中央銀行の利下げ姿勢が後退し、想定するシナリオが大きく変わってしまいます。 ――当面の運用環境をどのようにお考えなのか教えてください。「ポラリス」は2020年6月の設定来、年間リターンは常にプラスをキープしてきました。そのリターンには為替の円安の影響もありましたが、日銀が利上げに転じた今、これまでのような一方的な円安は期待しにくいと思います。今後の見通しは? 9月時点で資産配分比率の大きな調整を行いました。米国が利下げに踏み出し、ソフトランディングの期待が高まったことが大きく影響しています。株式への投資配分を落として、債券とゴールドへの配分比率を高くしました。株式への配分を減らしたのは、利下げによって米国株価などが大きく上昇したのは、やや楽観的な見方が強すぎるのではないかと考えたためです。 また、米国が利下げを継続する見通しのところ、日本は利上げの方向にあります。この金融政策の違いによって為替の変動率が高まると考えたため、為替ヘッジ比率を高めて円資産の割合を50%以上に高めました。設定来の年率リターンは13.57%ですが、このうち3分の1程度は円安による効果です。 これからの新しい成長機会として「金利」が注目されますので、そこから得られるリスクプレミアムに注目していきたいと考えています。
ウエルスアドバイザー