能登半島地震からまもなく半年 新たなコミュニティーづくりに馬を役立てたい
<角居勝彦元調教師 Thanks Horse(40)> 来週の7月1日で震災から半年になります。今月の3日には震度5強の地震がありましたし、今でも震度3ぐらいの余震が月に1~2回はあります。 珠洲ホースパークでは先月に上水道が復旧しましたが、地下の水道管はどこが壊れているかも分からない状況なので、地上でホースをつなげて厩舎へ水を通しています。下水道はめどが立っておらず、微生物で浄化する循環型のトイレをリースしています。残念ながら営業再開の時期はまだ決められそうにありません。 正直なところ、復興はなかなか進んでいないのが現状です。近くの集落ではつぶれたままの家がたくさん残されています。その一方で、全国のニュースなどで被災地が取り上げられる機会も減り「だんだん忘れられていくのかな」と思ってしまう時もあります。 最近は民間のボランティアの方々も多くなりましたが、被災地には宿泊施設が少なく、金沢から通われる方が大勢いらっしゃいます。ただ、能登までは道路が実質1本しかつながっていないので、朝夕の渋滞が増えてきました。その宿泊所を補うため、ホースパークの敷地内にも6棟の「インスタントハウス」(数時間で完成できるテント型住居)を設置しました。この近くにもボランティア用の仮設住宅が造られています。 そんな中で、せっかくボランティアの方に来ていただいたのに、現地でしてもらうことがないという事態もあると聞きます。それぞれの被災地でどんなサポートが必要なのか、フィードバックも大事です。もちろん、まずは人優先になりますが、私たちとしては、馬に携われる方にも来ていただければと願っています。 今後は元に戻るのではなく、1歩でも前へ進まなければなりません。もともと奥能登は過疎化で限界集落や消滅集落の問題を抱えていました。それが震災によって、さらに悪い方向へ加速してしまっています。 一方で、これを機に、水道やエネルギーなどの公共インフラから自立した「オフグリッド」の街づくりを進める動きもあります。こうしたコミュニティーの中で、馬を役立てられないかと考えています。全国的に注目されている地域ですし、国会議員の方も数多く視察に来られています。この地震をきっかけやチャンスに変えられるようにしていければと思っています。 〇…珠洲ホースパークでは先月24日に新しく2頭が加わった。19年中京記念を勝ったグルーヴィットと22年の同レース勝ち馬ベレヌスで、ともに所有していたキャロットクラブのプロジェクトで実現。所属馬は計7頭。角居氏は「今は(同じくキャロットクラブが所有していた)カウディーリョがボスなので“権力争い”の最中です。まずはチームワークをつくれれば」と説明する。