「音楽はサブスク」時代になぜ? 最高益を更新したタワレコ大復活の理由
■“価値ある無駄”も大切にする じつはタワーレコードにも、効率化を重視した運営を試みた時期があった。スタッフの志向ではなく、全店共通の品ぞろえによって無駄をなくすという施策だったわけが、結果は芳しくなかったという。 「つまり“スタッフの手書きのポップではなく、全店同じものをコピーして貼っておけばいい”という発想ですよね。その結果、僕が思うタワレコらしさが失われ、売り上げも目に見えて落ちた。そのときに“やはりこちらの熱量がお客様に伝わっていたんだな”と実感しました。私たちは“価値ある無駄”と呼んでいるんですが、データや効率よりも“好き”という情熱を大切にする企業文化は今も継承されていると思います」 さらに高橋氏は「“マスコア戦略”も大切にしています」と言葉を重ねる。 「1つのアーティストのファンのなかにも、マス(一般的なリスナー)とコア(熱狂的なリスナー)がいます。コアなファンは“熱量”に敏感なので、こちらも同じ熱量を持って応援することでまずはコア層からの信頼を得る。やがてはその熱波をSNSなどを介してマス層にも波及させていくという方法です」 結果的にマスとコア、両方の層から「○○○を買うならタワレコだよね」と言ってもらえる市場を作るというのが、その趣旨だ。 業績回復の理由は他にもある。まずは海外からの観光客の増加。今年2月にフロア面積と在庫を拡大したアナログレコード専門店『TOWER VINYL SHIBUYA(タワーヴァイナル渋谷)』(タワーレコード渋谷店・6階)は「売上の7割程度が外国人のお客様」だとか。 「中国、台湾、韓国、アメリカからのお客様が多いですね。案内も4カ国語にし、免税カウンターも設置。店舗で使える外国人向けクーポンなども用意しています。日本のシティポップの流行が牽引している部分もありますが、『TOWER VINYL SHIBUYA』では新作のヴァイナルにも力を入れているので、新しい作品を手に取る方も多いですね」 また、アーティストのツアーに帯同し、会場の特設売り場でのCDやDVDなどの販売も伸びているという。