【G7広島サミット】岸田首相が議長国会見(全文)※冒頭発言のみ
理想には手が届く
今回、私はそうした思いで、ここ広島で世界の首脳たちに集まっていただきました。夢想と理想は違います。理想には手が届くのです。我々の子どもたち、孫たち、子孫たちが核兵器のない地球に暮らす理想に向かって、ここ広島から今日から1人ひとりが、広島の市民として一歩一歩、現実的な歩みを進めていきましょう。 1945年8月6日午前8時15分、77年と9か月の月日を経て、我々G7の首脳はこの地に集いました。ときを隔てた広島の声と祈りを、我々は今、ともに聞いています。力による現状変更のための核兵器による威嚇、ましてやその使用はあってはなりません。 核兵器を使わない。核兵器で脅さない。人類の生存に関わるこの根源的な命題を、我々は今こそ問わなければなりません。国際社会は今、力により一方的に国境線を変更しようとするロシアの暴挙を目の当たりにし、歴史の転換期に立っています。主権や領土一体性の尊重といった先人が築き上げ、長年にわたり擁護してきた、誰しも疑いようのない原則が挑戦を受けるまっただ中で広島サミットは開催されました。ゼレンスキー大統領を日本にお招きして、G7とウクライナの揺るぎない連帯を示すとともに、G7として法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序の重要性を確認し、これを守り抜く決意を新たにするとのメッセージを世界に向けて力強く示せたことは意義深いことであると感じています。 世界のどこであれ、力による一方的な現状変更の試みは決して認められません。G7として1日も早く、ウクライナに公正かつ永続的な平和をもたらすべく努力していきます。
気候危機についても率直に議論
また、ウクライナの復旧、復興には民間セクターの参画が不可欠であること、そして、対ロシア制裁を維持・強化し、その効果を確かなものとするために、制裁の回避、う回防止に向け、取り組みを強化していくことで一致をいたしました。 世界は今、ウクライナ侵略に加え、気候危機やパンデミックなど複合的な危機に直面しており、それによりグローバルサウスと呼ばれる新興国、途上国や、脆弱な立場の人々が、甚大な影響を受けていることも事実です。こうした国や人の声に耳を傾け、人を中心に据えたアプローチを通じて、人間の尊厳や人間の安全保障を大切にしつつ、喫緊の幅広い課題に協力する姿勢を示さないことには、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を守り抜くとの訴えも空虚なものとなりかねません。 こうした国々とG7を橋渡しすべく、世界各地で積極的に行ってきた外交を礎とし、広島サミットではG7に加え、国際的なパートナーも交え、我々が対応しなければならない様々な課題について真剣な議論を行いました。 食料危機は、人々の暮らしに関わる喫緊の課題です。今回、G7と招待国が連帯してこの課題に取り組んでいくことを、行動声明として確認しました。また、グローバルなインフラ支援で協働することを確認するとともに、その際、透明で公正な開発金融を促進していくことで一致をしました。 人類共通の待ったなしの課題である気候危機についても率直な議論を行い、気候変動、生物多様性、汚染といった課題に一体的に取り組む必要があることを確認しました。また、エネルギー安全保障、気候危機、地政学的リスクを一体的に捉え、各国の事情に応じた多様な道筋のもとで、ネットゼロという共通のゴールを目指すという認識を共有しました。 日本はアジアゼロエミッション共同体構想の実現を通じ、地域のパートナー国のエネルギー移行を支援していきます。さらに、新型コロナが収束する中、次なる危機に備えるための国際保険、ジェンダー主流化の推進といった課題についても議論を深め、連帯を確認しました。国際保険については、G7全体として資金貢献を行っていく中で、日本はグローバルヘルス技術振興基金への2億ドルのプレッジを含め、官民合わせて75億ドル規模の貢献を行う考えです。