掘り出しもんいっぱい 四天王寺「古書市」にぎわう
四天王寺で青空の下、思い思いに本を探すひとときを楽しむ THE PAGE大阪
広い境内を古書が埋め尽くす「四天王寺春の大古本祭」が大阪市天王寺区の四天王寺で開かれ、掘り出し物を探す古書ファンらで連日にぎわっている。あべのハルカスを見渡す青空古書市だ。
本を手に取りやりとりを交わすぬくもり
今年で13回目を迎え、得意分野の異なる約30店舗の古書店が出店。テント張りの書棚に各店自慢の専門書が並ぶほか、1冊100円、5冊1000円などの均一台も設置され、両手一杯に買い求める人が相次ぐ。 シニア世代の古書ファンは自身の収集テーマに沿って、なじみの店舗を巡回。店主や収集仲間と歓談しながら、情報収集に余念がない。「あんたの探してる本、あの店にあったで」と教える世話焼きもいる。 主催する関西古書研究会会長で大仙堂書店を営む菅哲夫さんは「会場へ足を運び、本を手に取って選んだり、店主と言葉を交わすやりとりを通じて、ぬくもりを感じてほしい」と呼びかける。ぬくもりをもたらす本の特色を生かして、子どもたちの成長を助けたいと意気込む。 「『桃太郎』の読み聞かせをしているうちに、子どもは『あの桃はどうなったの』などと、話の続きを聞きたがる。心のスクリーンに物語が映っているからです。子どものころに本を読んで心のスクリーンを広げると、世界をしっかりとらえる感受性を養うことができます」
家族3代の読み聞かせ絵本を求めて 29日まで開催
大規模な古書市を喜んでいるのは、筋金入りの古書ファンばかりではない。作業服にヘルメット姿のたくましい男性が、100円均一台のグラフ雑誌の山に取り付いている。近所の工事現場で働いており、昼食のついでに冷やかしにきたという。気軽に立ち寄れるのが青空古書市のよいところだ。 酒井和歌子、秋野暢子、松尾雄治、フェアレディZ。折々に話題を呼んだ美女、ヒーロー、人気車などが彩る表紙を見比べながら、腹ごなしの立ち読みを楽しんでいる風情だった。 それぞれ3歳と2歳の女児を連れた20代のママコンビは、仲良く絵本コーナーへ。ご近所から散歩がてら、読み聞かせ用の絵本を探しに訪れた。 「母親に絵本を読んでもらって育ったので、私も娘に読んでやりたくて」と、家族3代の読み聞かせに取り組んでいるという。「読み聞かせは親子が向き合える大切なひととき。スキンシップが魅力です」「子どもは文字が読めなくても、新しいお話をせがむので、お値段の格安な古本でたくさんの話を仕入れたい」と、話していた。 戦後70年を迎え、1冊の本が足元を見直す契機になるかもしれない。開催は29日までで、時間は午前10時~午後5時(最終日は午後4時まで)。雨天の場合は中止の時もある。詳しくは大仙堂書店(072・994・8852)へ。 (文責・岡村雅之/関西ライター名鑑)