金子大地インタビュー 「好き」で繋がっている2人を目撃する映画『ナミビアの砂漠』
憧れの役者は‥‥
――そうなんですね。演じる役の多くもそうですしね。ちなみに憧れの役者さんはいますか。 いっぱいいます。素敵な役者さんは沢山います。先輩が残してくれた作品を観て、僕たちはもっと頑張らないといけないと思いますし、“僕と同い年でこの作品を残しているんだ”と驚愕するほどの先輩たちはやっぱり凄いです。そういう役者になりたいと思います。 黒澤明監督の『天国と地獄』(1963)で山﨑努さんが最後に三船敏郎さんと対峙する名シーンがあるんですが、あの時の山﨑努さんの年齢が確か26歳だったと思うんです。今の僕より若い頃にあの演技をされているんです。本当にかっこ良くて、あの雰囲気というか、あの存在感は何なんだろうと思います。『天国と地獄』のような作品を観ると、自分の演技はまだまだだと強く思います。もっと自分に負荷をかけないといけないと思います。 ――しっかり自分を見つめているんですね。今後、新しくやってみたいことはありますか。 今、自分の仲間たちとユニット(惚てってるズ :金子大地と前原瑞樹と三村和敬の俳優3人組のユニット)を組んでいて、今年初めて自分たちで企画した舞台(惚てってるズ旗揚げ公演『惚てはじめ』)をやったんです。このユニットでの舞台を自ら仲間と一緒に発信していけたらと思っています。それが最近のモチベーションになっています。 今年の舞台は演出家さんにお願いして公演を行いましたが、いずれは自分たちで書いた脚本で舞台に立ちたいと思っています。3人に共通していることは、ふざけるのが好きで、笑わせることが好きなところなんです(笑)。だからコメディは結構やっているんですけど、コメディに限らず自分達で、1つ書き上げることが出来るユニットに出来たらいいなと話しています。 ――ユニットを組んでみたいと思ったきっかけはなんですか。 以前から3人で「面白いことをやりたいね」と話してはいたんですけど、行動に移すことはしていなかったんです。それがやっと今回、1人が動いてくれて実現した感じです(笑)。稽古場をおさえるなど、自分たちでやることの大変さも理解出来ました、ただ演じるだけではなく、その裏の大変さを知ることは、役者の責任としてとても大切なことだと思いました。凄くイイ経験になりました。 色々な人が携わって1つの作品が出来るということをこれからも大切にしたいですし、自分が出来ることは精一杯やりたいと、より思うようになりました。色々と考え方が変わりました。我儘だったところとか‥‥、色々と頑張らないといけないと思いました。脚本を書き上げたら是非、舞台を観に来て下さい。 ――もちろん、ですよ! ・・・ 金子大地さんが演じる【ハヤシ】を、金子さんは「イイやつ」とよく言い、「自分も【ハヤシ】のような一面も持っている」と話していました。実は完成披露試写会の日、上映後に観客の方からの質問に答えるという時間がありました。その時、寛一郎さん演じる尽くしてくれる【ホンダ】と、自分のことで余裕がない【ハヤシ】のどちらと付き合いたいかを聞いてみると、90%の人が【ホンダ】を選んだのでした。けれど【カナ】は【ハヤシ】を選んだわけで、そう思うと人は自分の思い通りにならない人間の方が刺激的なのかもしれない。むしろ【ハヤシ】が【カナ】とすぐに別れない理由も刺激的だからかもしれない。金子さんの言う通り、本作は、言葉では説明できない「好き」で繋がっている2人を目撃する映画なんだと腑に落ちたのでした。面白い、皆の演技も映画自体も。
取材・文 / 伊藤さとり(映画パーソナリティ)