「世界一過酷な400メートル」ジャンプ台逆走レースに、100キロマラソン経験者が挑んでみた 〝四つんばい〟で感じた絶望と、連覇達成者が語る魅力
札幌市中央区の大倉山ジャンプ競技場で5月、ラージヒルジャンプ台を逆走する「Red Bull 400(レッドブルフォーハンドレッド)」が開催された。最大斜度は37度で「世界一過酷な400メートル」をうたい、今回で7回目となった大会には男女合わせて過去最多となる1644人が参加した。記者(42歳男性)もその一人で、断崖絶壁をよじ登るも同然で想像を絶する苦しさだった。 【写真】スキーのジャンプ台を着地ゾーンから頂上に向かって駆け上がる人たち
女子と男子の優勝者はそれぞれ、2連覇と4連覇を達成。これだけつらいレースに毎年挑みたくなるのはなぜなのか、魅力を語ってもらった。(共同通信=松本はな、佐々木一範) ▽標高差130メートル、制限時間は15分 コースは400メートルのうち、最初の100メートルほどは緩やかな下り坂。実質的に300メートルで、標高差130メートルを登ることになる。札幌市の観光名所の一つ、さっぽろテレビ塔は全長が約147メートル、展望台の高さは約90メートルだ。 個人戦のシングルと4人1組のリレー種目があり、シングルでは1組60人ほどによる予選の後、男女それぞれ上位30人が決勝に進出する。 斜度が37度となるのはスタートから200メートル付近。主催者によると富士山の山頂部の傾斜は32~35度だという。この急勾配を、制限時間の15分間以内に駆け上がらなければならない。 ▽胸に付けたカメラに写っていたのは、地面、地面、地面
記者(佐々木)はランニングが趣味で、100キロの「ウルトラマラソン」も2回完走した経験がある。「過酷とは言っても、400メートル。何とかなるだろう」。そんな甘い考えは、すぐに打ち砕かれることになる。 最初の下りで助走を付けるが、上りに入ると一気にスピードダウンした。前半、足元は芝で滑りやすく、その上に格子状に敷かれた縄に足をかける必要があった。 しかし何よりの問題は急角度だ。数十メートル進むと、たまらず四つんばいの姿勢になった。「えっ、もうこんなにきついのか」。序盤からこんな調子では最後まで辿り着けないのではないかと、絶望にも似た気分になった。胸に小型カメラを付けていたが、この辺りから収められていたのは地面と、自分の荒い呼吸音だけだった。 スキージャンプ競技で選手が踏み切る「飛び出し」の手前で勾配はやや緩やかになり、手を離して歩くことができた。呼吸を整えたいが制限時間が気になり、気力を振り絞って足を動かした。滑走エリアでは、足元には木製の足場が約20センチ置きに敷き詰められ、階段のようになっている。