悔しくて花束投げつけたーー新井恵理那、「無職」からの確変、目指すは「人食い花」
一体、何が変わったのか。 「最初の頃から、言葉の選び方や自分がどう工夫すれば良いかは考えていました。でも、全然上手くいかない。それが、自分なりにトライし続けたことで、数年前に突然、好転するようになったんです。バトンをつなぐようにひとつ一つのお仕事を懸命に取り組んできたからかもしれません」 VTRからスタジオに移る際、どんな言葉なら熱量を保てるか。暗いニュースから明るい話題に切り替える時、どのくらいの間を取るべきか。何年間も、試行錯誤を積み重ねてきた結果が今に繋がっている。 新井の工夫は、細部に行き届いている。昨年12月3日、『グッド!モーニング』のプロ野球年間MVPを選出するコーナーでのこと。CM前のVTRで投手部門の発表を予告しているのに、CM明けに新井が里崎智也(元ロッテ)に「今週はどの部門でしょうか?」と生で聞く流れになっていた。違和感を覚えた新井は、午前3時から始まる打ち合わせで、スタッフに異議を申し立てた。
「すっかり忘れた体で聞くのは変だと思ったんです。自分の気持ちを無にすればいいだけなのですが、見ている人は『え?さっき投手部門って言ったじゃん』と気付きますよね。細かいことでも、疑問を抱いたまま進みたくないんです」 結果的に、CM前に投手部門とは公表せず、スタジオで新井が質問する形になった。 「上っ面だけで話したり、思ってもないことを言ったりするのも嫌ですし、変な意地はあります。台本に書いてあることが、本心とは違うと感じたら、その隙間を埋める自分なりの表現方法を探します。毎日のように葛藤していますね」 テレビではフリーアナウンサーも局アナと同じ進行役を求められるが、ネット上では「フリーアナはタレントだ」という意見もある。一方で、局アナのタレント化を批判する声も絶えない。新井はどう受け止めているのだろうか。
「まず、私は“タレント”ではなく“女子アナ”と見られていると実感しています。以前はそのイメージに当てはめられることが息苦しかったけど、最近は枠の中でいかに個を出すか意識できるようになりました。そもそも、区分けする考え方は時代にそぐわない気がします。YouTuberは何をする人という定義はない。星野源さんはミュージシャンであり、俳優でもある。たくさんの人がマルチに活動されていますよね」 12月22日、新井は30代に突入した。かつて女子アナ界では“30歳定年説”が囁かれていたが、現在は有働由美子など年齢を重ねてもテレビ界で一線を張るキャスターたちが存在している。 「目の前の仕事を頑張らないと次はない。今も、平均台の上をずっと歩いているような心境です。出演本数は単純に帯のレギュラーがあるから、増えている気もしていて。5位というランキングに自分自身が追いつけているのかどうか。今はスタジオの進行ばかりですけど、ロケにも出たい。バラエティーでは綺麗な花のような扱いをされがちですが、『人食い花』のような衝撃的なインパクトを与えたい。いろいろ挑戦して、もっと経験値を増やしたい。……欲しがりなんですよ(笑)」 生まれ持った美貌やミスキャンパス受賞歴だけで地位を築けるほど、女子アナ界は甘くない。言葉の言い換えでごまかさず、現実にきちんと向き合う。細部にこだわって、自分を厳しく律する。ひとつ1つの仕事に妥協を許さない姿勢が、テレビ出演本数ランキング年間5位という必然を生んだのである――。
新井恵理那(あらい・えりな)
フリーアナウンサー。1989年12月22日生まれ。アメリカ出身。青山学院大学総合文化政策学部出身。大学2年生のときにミス青山コンテスト2009でグランプリを獲得。テレビ朝日系『グッド!モーニング』、TBS系『新・情報7daysニュースキャスター』などの報道・情報番組を務める。2019年上半期にはアナウンサー・キャスターのTV番組出演数ランキングで1位に選出される。弓道2段、スキューバダイビング、ジュニア野菜ソムリエの資格を持つ。