【塩ワンタン麺】まるで天女の羽衣!? 三鷹の老舗ラーメン店のワンタンは、究極のふわとろ食感だった:パリッコ『今週のハマりメシ』第149回
ある日、あるとき、ある場所で食べた食事が、その日の気分や体調にあまりにもぴたりとハマることが、ごくまれにある。 【写真】食べごたえある中太麺 それは、飲み食いが好きな僕にとって大げさでなく無上の喜びだし、ベストな選択ができたことに対し、「自分って天才?」と、心密かに脳内でガッツポーズをとってしまう瞬間でもある。 そんな"ハマりメシ"を求め、今日もメシを食い、酒を飲むのです。 * * * 僕の最新エッセイ集『缶チューハイとベビーカー』の発売記念トークイベントを、今月末に三鷹の「UNITE(ユニテ)」という書店で開催してもらえることになった。共演は同じくライターの岡田悠さんで、近著『はこんでころぶ』とのダブル発売記念イベントとなる。 三鷹は、僕の住む西武池袋線、石神井公園の街から電車でのアクセスは良くないけれど、中央線で吉祥寺の隣駅。自転車で縦に南下すれば、30分もかからずについてしまう距離だ。せっかくお声がけいただいたのにまだ訪れたことのない店だし、事前に一度ご挨拶に行ってみよう。そう思い立ち、シェアサイクルで三鷹の街へ向かった。 この日はなんだか変な天気で、家を出た時は日差しが熱いくらいの夏晴れだったのに、自転車をこいでいると急な天気雨が降ってきたりして、またしばらく晴れ、よし服が乾いてきたなと思ったら、ふたたびザッと通り雨に襲われたりして、結果的に、三鷹に着いた時点の僕はしっとりと濡れていた。 自転車を返却してUNITEに向かって歩きだしてからも、やはり突然ものすごい雨が降ってきたりして、街のあちこちから悲鳴が聞こえている。幸い目の前にダイソーがあったので飛び込み、いちばんでっかい500円の傘を買って歩きはじめたとたん、ぴたりと雨がやんだ時には、さすがに地球におちょくられている気分になり、少しだけ切なかった。 そこで、UNITEへ行く前に、いったんエアコンの効いたお店で落ち着き、服を乾かしたい。それに、今日はまだ昼食を食べていないから、腹も減っている。よし、どこかで食事をしてから行くことにしよう。大きな規模の街で、目的地は駅から10分ほど歩いた場所にあるから、きっとなにかしらあるだろう。 そう決めて歩きだし、しばらくすると、なんとも魅力的な店を発見した。「ワンタンメンの満月」。重厚な木製の看板に「創業昭和三十五年」とある。僕がいちばん好きな、その地域で歴史を刻んできた老舗というわけだろう。そしてまた、大好きなんだよな。ワンタン。 迷わず入店する。近年リニューアルされたのか、店内は清潔そのものだ。 入り口の券売機を見ると、名物である「ワンタンメン」は、醤油、塩、ピリ辛味のスタミナの3種類があるよう。他に各種トッピングや単品。生ビールと日本酒「初孫」があるのも嬉しい。 ラーメンよりも先に、迷わず「生ビール」(税込500円)のボタンを押す。そしてメインは......なんとなく、塩の気分だな。「塩ワンタン麺」(970円)でいこう。 すぐに、見るからによ~く冷えたビールが到着。たまらずごくりとのどに流しこむと、さっき地球におちょくられたことが逆に良いスパイスとなり、じわーっと心身に染み入るうまさだ。サービスの小皿は、だし用の昆布を素揚げしたものだろうか。軽快な食感と旨味がとてもいい。
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