トイレ撤去で信頼失墜? JRの“切り捨て体質”が招く鉄道危機、利用者軽視が招くトイレ行列の実態とは?
鉄道とトイレ
ふだん健康な人でも電車の乗車中にトイレに行きたくなり困った経験が何回かはあるだろう。 【画像】「えっ…!」これが誰もが納得の「電車内迷惑行為ランキング」です(全13枚) 新幹線や特急では車内にトイレがあるが待ち行列ができていることも少なくない。汚さないように使おうという意識はあっても揺れるのでうまくゆかないこともある。 これが満員の通勤電車となるとさらに深刻だ。早く駅に着いてトイレに直行したいと焦るときに限って 「非常ボタンが押されました」 などと電車が止まったりする。ようやく駅に着いてトイレに向かうとそこでまた行列ということもよくある。
進化する列車トイレ技術
ところで日本の鉄道は世界的に「安全・正確」で評価が高いが、列車トイレ自体は世界最優秀といえる。かつての列車トイレと洗面所は、「開放式」すなわち排せつ物や洗浄水を排水管からそのまま線路に放流する方式で「黄害」と指摘されていた。昭和の世代なら 「駅に停車中は使用しないでください」 「北陸トンネル内では使用しないでください」 などの表示を記憶しているかもしれない。海外の先進国でも「開放式」がほとんどだった。しかしその後に技術的な改良が重ねられ、2000年代初頭までに日本の列車トイレはJR・民鉄を通じてローカル線の隅々までも 「閉鎖式」 すなわち外部に放流せず車両基地で集中処理する方式に移行したことは世界的にも高く評価される。 こうした経緯が清水洽氏の『列車トイレの世界』(丸善出版)という本にまとめられているが、関係者だけでなく一般の人向けの本になるくらい重要なテーマであるともいえる。
「所便」の時代
今では年配者でも「トイレ」と呼ぶ人がほとんどだが、昭和の時代には、おそらく戦災を受けなかったローカル線の駅などに、ホームに昔のままの右から左に読む 「所便」 という青札が残っていたのを見かけた。しかし当時の駅のトイレの状態は劣悪で、水洗が普及していなかったこともあって、臭気や汚れなどの衛生面はもとより、落書きが多く見るに堪えない状態だった。個人情報を示して誹謗(ひぼう)中傷する落書きさえあった。 現在のネット上の下品な書き込みは「トイレの落書き」と称されるが、トイレが昔よりはきれいになった一方で 「落書きがネットに移行しただけ」 なのだろうか。いささか興味本位になるが、写真はJR西日本のローカル線で見かけたトイレである。こうなるとむしろ 「遺構」 の範囲かもしれない。鉄道が主要な交通手段であった時代には多くの人の役に立っていたのだろう。 一方で使い方の面で、今では全国どこでも鉄道に限らずトイレの「一列並び」が定着しているが、過渡期には摩擦もあった。一列並びを理解せず無視する人があり、注意しても「何をわけのわからないことをいってるんだ」と話が通じないこともあった。