巨人は相性の良さだけで選手を起用するな 日本の球界は「教えること」を教えない/廣岡達朗コラム
何でもかんでもデータに頼っていたら……
【廣岡達朗連載「やれ」と言える信念】 巨人・阿部慎之助監督は相性の良さでローテーションやオーダーを組んでいる。 【選手データ】廣岡達朗 プロフィール・通算成績 菅野智之は開幕6戦目の中日戦(バンテリン)になってようやく今季初先発した。球界随一の実績を誇る投手をなぜ阪神との開幕戦(東京ドーム)に投げさせなかったのか。昨年の菅野の対戦チーム別成績を見ると、阪神に0勝3敗、防御率5.40と苦しんだ。一方、中日には2勝1敗、防御率0.52と抑えている。相性がいいチーム相手に持ってきた証拠だ。 代わって戸郷翔征が初の開幕投手を務めたが、彼は腰を使って投げていない。私に言わせれば手投げだ。菅野をシーズンの頭に持ってくれば、意気に感じて菅野はやる。彼はピッチングができる男。年齢とともに期待にこたえられなくなったら、クローザーに転向させて短いイニングを全力で放らせればいいのだ。 1996年にロッテ監督を務めた江尻亮は、データを重視していた。私はGMとして「相性がいいからといって起用していたら、オーダーはどうなるのか」と注意した。何でもかんでもデータに頼っていたら、成功するはずがない。
四番には貫禄が必要だ
巨人に関してはもうひとつ、昨年まで原辰徳前監督が起用していた投手をほとんど使っていないのは、どういうことか。 これでは人間は育たない。人というのは信用されないと絶対に伸びない。私の現役時代の監督だった水原茂さんは選手を使い切ることで成長させた。 今の巨人は、クリーンアップが意味をなしていない。クリーンアップの定義とは塁上の走者を「掃除する」こと。それなのに、2年目の門脇誠に三番を打たせてどうするのだ。 四番の岡本和真は体が締まってきた。と同時に、半開きになっていた口も閉じてきた。今季は打率、本塁打、打点の打撃三部門でトップに立っている。いただけないのは本塁打を打ってベンチに戻ってくると、控えの選手に気軽に肩を叩かれて迎えられることだ。四番のプライドも何もない。貫禄がない証拠だ。かつての川上哲治さんばりの存在感、オーラを身に纏うことが必要だ。 丸佳浩は、守備はうまいと思うが、監督がそういうところを見ようとしない。