NHK朝ドラ史上、最も視聴者をイライラさせたキャラ(5)眉をひそめる行動も…お茶の間を悶々とさせた人物は?
1961年にスタートしたNHK連続テレビ小説、通称“朝ドラ”。月曜日から金曜日まで毎朝8時から放送され、通勤や通学前の視聴者に活力を与えているが、時にはどうしても素直に好きとは言えないキャラクターも登場する。今回は比較的記憶に新しい朝ドラの中から、俳優の演技が上手すぎて視聴者を大いにモヤモヤさせたキャラクター5選をお届けする。第5回。(文・苫とり子)
小夜(富田望生)『ブギウギ』(2023)
視聴者を悶々とした気分にさせるも、どこか憎めないキャラクターだったのが2023年下半期に放送された『ブギウギ』の小夜(富田望生)だ。 本作は、戦後の日本を明るく照らしたブギの女王・笠置シヅ子の半生をモデルにした物語で、人情あふれる大阪の下町で生まれたヒロインのスズ子(趣里)がスター歌手になっていく過程を描いた。 小夜は福島出身で歌手を目指してスズ子に弟子入りを志願。明るく人懐っこい性格で、妻を亡くしてから傷心の身だった父・梅吉(柳葉敏郎)の癒しとなった。しかし、スズ子から梅吉が酒を飲みすぎないように見張りを頼まれていたのに、一緒になって酒を飲んで大騒ぎ。 さらには自分がお金を紛失したにもかかわらず、スズ子のファンでのちに夫となる愛助(水上恒司)に罪をなすりつけるなど、思わず眉をひそめてしまうような行動が多々見られたことから視聴者の反感を買った。 だけど、わずか12歳で奉公に出された過去や、「オレ育ちが悪いからうたぐり深えんだ」「夢を語る男は信用できねえ」「いっつも騙された!」といった発言から、その言動の裏には苦労が見え隠れしていたし、弟を戦争で亡くして失意のどん底にいたスズ子に誰よりも近くで寄り添うなど、優しいところもあった小夜。富田のコミカルでチャーミングな演技も彼女を憎みきれなかった理由の一つだ。 そして何よりそんな彼女を放っておけないのがスズ子の性格であり、社会からつまみ出されてしまうような人とも義理と人情の精神で助け合って共に生きていく...というのがこの物語の核になっていた。そういう意味でも小夜は本作に欠かせないキャラクターであり、議論を呼んで物語をさらに盛り上げてくれた一人である。 (文・苫とり子)
苫とり子