現職裁判官による賠償請求訴訟、地域手当は東京23区20%、津6%…7段階の差、名古屋よりも豊田が高いのはなぜ?
裁判官に支払われる地域手当が赴任地によって減額されるのは違憲などとして、津地裁で民事部の裁判長を務める竹内浩史裁判官(61)が2日、国に減額分の報酬計約238万円の支払いを求める訴えを名古屋地裁に起こした。現職裁判官が国を提訴するのは極めて異例。 竹内裁判官の提訴には、地方で勤務する裁判官の待遇への不満が背景にある。 地域手当の格差「違憲」 名古屋地裁 津地裁裁判官が国提訴
提訴の背景に地方勤務裁判官の不満
国家公務員に支払われる地域手当は、基本給(俸給)に扶養手当などを加え、そこに地域ごとに定められた支給割合をかけた額となる。支給割合は7段階で、東京23区が1級地(20%)で最も高く、津地裁のある津市は6級地(6%)。愛知県では名古屋市は3級地(15%)とされ、2級地(16%)の豊田市などよりも低い。竹内裁判官は大阪高裁から名古屋高裁、津地裁と異動したが、大阪(16%)と津の給与を比較すると、月額約10万円の減少になるという。 こうした割合は、各地域の物価や民間企業の賃金などを考慮して設定されているが、竹内裁判官は「都市部の生活費が高額だと一概に言えるか疑問で、地域手当の支給割合の設定には明らかに不自然な部分がある」と主張する。 中部地方で地裁支部の裁判官を務めていた男性(60)は、支部への赴任から1年たった今春、裁判官を辞めた。事件数に対して人手が足らず、大量の事件を1人で抱える一方で、地域手当が前任地より低い上に夜間対応の宿泊費用が出ないなど、待遇の悪さを感じていたという。「仕事の内容は楽しく、定年までやりたい気持ちはあったが……」と残念がる。 最高裁によると、定年を待たずに依願退官した裁判官(簡裁判事を除く)は2020年に44人で、21、22年は50人、23年に54人と増加傾向にある。竹内裁判官は「全国で平等の司法を実現するために裁判官を地方で勤務させているのだから、地域間格差を作るべきではない。このままでは地方を回る裁判官がいなくなる」と訴えている。