マンガ大賞『君と宇宙を歩くために』作者取材 “普通”ができない2人の友情物語 「実体験をベースに」
■漫画を描き始めたきっかけは…美術の先生が見せてくれた作品
――漫画家になろうと思われたきっかけを教えてください。 中学の時に美術の先生が学校に漫画を持ってきていて。「学校に先生が漫画を持ってくるなんて」と私は思ってたんですけど、先生が見せてくれたのが、五十嵐大介先生の『海獣の子供』で、先生が「私は五十嵐大介の漫画を読むために生きてるんだ」って言ってて。その時に借りた話がものすごく面白くて。大学生になった時、雑貨店に五十嵐大介先生の話がたくさんあったので「これ全部買っていいんだ!」って思って、自分で手に入れて読み始めた時に「自分でも漫画描いてみたいかも」っていうふうに思って、大学生の時にまとまった、オチがきちんとある漫画を描いた記憶があります。 ――憧れる漫画家さんはいますか? 影響をたくさん受けたのは五十嵐大介先生とルネッサンス吉田先生、伊図透先生、中村明日美子先生です。その方々の作品は、自分が大学生ぐらいの時に読んで、漫画を描きたいなって思った時に、いつも隣に置きながら描いていました。 ――ペンネームに「犬」の漢字が入っていて、さらに仮面も犬ということですが、犬がお好きなんですか? 犬がかわいいなと思って(笑) 元々そんなに犬が好きじゃなくて、小型犬とかすごく怖かったんです。でも知り合い、自分以外の人からすごく犬が好きっていう話をずっと聞いてて、それを聞いてるうちにだんだん「犬ってかわいいかも」って自分の中で思った時期があって。人の意見とか人の「犬かわいい!」っていうのをずっと聞いてることで、自分の感覚がだんだん変わることってあるんだなって思った経験があって、そこから本当に「ワンちゃんってかわいいな」と思うようになりました。自分が元々持ってた偏見じゃないですけど、そういうのも込めて犬っていう文字使おうかなと思ってこの名前になりました(笑)
――この作品を通して、読者のみなさんにどんなことを感じてほしいですか? 主人公の宇野くんと小林くんが今後も日常を歩いていくんですけど、ものすごく大きなイベントがあったりとか、大きな出来事があったりするわけではないんですけど、日常をただ歩く中にもそれぞれつまずくところがあったり、人から見たらすごい小さいことでも、ものすごくうれしいことがあったりすると思うので、今後もあくまで等身大に、そのキャラクターの子たちが感じた大きさで描いていけたらいいなと思っているので、それをそのまま読者の方に受け取っていただけたらいいなっていうふうに思っております。