『踊る大捜査線 THE LAST TV』で発揮される“緊張と緩和” スリーアミーゴスの見せ場も
『踊る大捜査線』の“笑い”の要素が詰まった『THE LAST TV』
11月10日19時より『踊る大捜査線 THE LAST TV サラリーマン刑事と最後の事件』がフジテレビ系にて放送される。本作は2012年に公開された『踊る大捜査線 THE FINAL』に合わせて放送されたスペシャルドラマで、今回が初の再放送となる。特に後年制作されたシリーズ、例えば『THE MOVIE 3』においては上記の通り青島の健康状態がストーリーの大きな柱となっていたり、『THE FINAL』では青島や室井が上層部によって警察辞職に追い込まれる展開があったりと。シリーズの中でもかなりシリアスな方向に舵を切った作劇であった。そんな中で制作された『THE LAST TV』は『踊る』が元来持ち合わせていたコメディに改めて挑戦した作品だと言える。 インターポールに指名手配されている女詐欺師、シン・スヒョンを捕まえるため、結婚式に誘い出そうとする緊迫した空気の中、湾岸署らしいさまざまなアクシデントが発生する様はドラマシリーズ第2話で体現していたわちゃわちゃとしたムードのある『踊る』のコメディ性を踏襲している。『THE MOVIE 2』のアバンタイトルではSATとの訓練において「緊張と緩和」を体現した青島だったが、本作のアバンタイトルでは小学生への交通安全教室において「緊張と緩和」を体現してみせる。神田署長と秋山副署長は『THE MOVIE 3』において警察官を退職したものの、『THE LAST TV』では湾岸署にカムバック。新しい湾岸署の署長となった真下正義と派閥争いを繰り広げる中で生まれるやり取りはこれまでのスリーアミーゴスの流れを汲んだものだ。前後の作品ではあまりクローズアップされなかったコメディとしての『踊る』の空気を感じられるのが『THE LAST TV』のみどころのひとつだと言えるだろう。 『踊る大捜査線』というシリーズにおいてコメディという要素も欠かせないことが『THE LAST TV』を見ることで実感出来るのではないだろうか。FODやNetflixなどでも配信中のドラマシリーズと見比べると一層その実感は増すはずだ。現在公開中の映画『室井慎次 敗れざる者』においても『踊る』らしいテンポの良い会話で展開するコメディは健在。ぜひ『踊る』をコメディという切り口から楽しんでみてほしい。
ふじもと