羽田衝突事故は「3つの要因」衝突15秒前、異変察知も回避できず 安全委が経過報告公表
羽田空港で1月、日本航空と海上保安庁の航空機が滑走路上で衝突し海保機の乗員5人が死亡した事故で、運輸安全委員会は25日、原因調査の経過報告を公表した。2機の衝突は、①海保機が滑走路への進入許可を得たと認識②管制官が進入に気づかず③日航機も海保機を認識せず-の3つの要因が重なったと指摘。海保機から回収したボイスレコーダーの内容も初めて明らかになった。 【画像】羽田空港の航空機衝突事故で、日航機の脱出シューターから避難する人たち 経過報告では、衝突15秒前に飛行場管制とは別の場所でレーダー監視するターミナル管制の管制官が画面上で海保機の進入に気づき、担当の管制官に問い合わせていたことも判明。日航機に着陸復行を指示することができた可能性もある。 経過報告によると、海保機には管制官から離陸順1番目を示す「ナンバーワン」と伝えられ、滑走路手前の誘導路C5まで進むよう指示があった。死亡した副操縦士が指示を復唱し、機長(40)も「1番目」「C5」と一部だけ復唱確認した。 機長は前日に起きた能登半島地震の被災地支援を優先してくれたと認識し、滑走路への進入を開始。安全委の聞き取りには、進入許可を得たとの認識について「副操縦士とも相互確認した」と説明したが、音声記録ではこのやりとりが確認できなかった。 一方、担当管制官は当時、衝突した2機を含め5機を担当。海保機が指示通り誘導路に向かったことを確認し、その後は着陸態勢に入った日航機の監視に集中、海保機の進入には気づいていなかった。 経過報告は日航機の関与にも言及。当時は日没後で月が出ていなかったが、シミュレーターで検証した結果、海保機の胴体尾部にあった衝突防止灯を日航機から視認できた可能性があることも判明した。安全委は今後も分析を進めた上で最終報告書を取りまとめるが、さらに1年程度かかる見通し。 ◇ ■羽田航空機衝突事故 令和6年1月2日午後5時47分ごろ、羽田空港C滑走路に着陸した日本航空516便と海上保安庁の航空機が衝突し、双方が炎上した。海保機の乗員5人が死亡、機長が重傷を負った。日航機の乗員乗客379人は全員脱出。海保機は前日に起きた能登半島地震の被災地支援に向かう予定だった。事故を受け、国土交通省は管制官増員や航空灯火の増設などの再発防止策を導入。警視庁も業務上過失致死傷容疑で捜査している。