サイゼの色がうす~い「イカ墨パスタ」に賛否。本場イタリアの味を知る筆者が実食
サイゼの本当のねらいは!?
注文して出てきたのは、写真どおりに色が薄めのパスタ料理。岩のりを絡めたような、ジェノベーゼソースをこげ茶にしたような、他のイタリア料理店でも見たことのない色合いでした。 メニュー名を知らなかったら、これをイカ墨スパゲッティと答えることは難しいでしょう。 私は昨夏イタリア・ヴェネツィアに滞在した際、本場のイカ墨スパゲッティを何度も食べました。本場の味はイカ墨ならではの漆黒色。ソースの旨味や甘み、苦味がバランスよく絡み合った濃厚ソースに深く感動したことを覚えています。 ここからは推測になりますが、おいしいイタリア料理を手軽に味わってもらうことを目指すサイゼリヤにとって、本場の味を目指すという戦略ははじめからなく、もっとシンプルにイカスミソースによって話題性を創出することが狙いだったのではないでしょうか? もちろんまずければ本末転倒ですから、押さえるべきところは押さえているはずです。
イカ墨スパゲッティと認められることがゴールではない!?
そして実食。想像以上にあっさりした食べ心地でしたが、イカ墨の風味を感じることができ、おいしくいただきました。 どちらかと言えばアンチョビやニンニクが効いた、日本人好みの味わいにまとまっている魚介風味のパスタ料理と説明した方がわかりやすいかもしれません。 気になるのは、食べた人がこれをイカ墨スパゲッティだと認めるか? という点。 本場の味を知る立場としては、あまりに違い過ぎて比較をしようとは考えませんでしたが、認めない人が大勢現れたとしてもまったく違和感はありません。 だって、そうですよね….。正直申し上げて別物! ネーミングや説明書きから想像するに、おそらくサイゼリヤもわかってやっているのです。
確かに、口にも歯にもほぼつかなかった
本場感への追求ではなく、食事中のエチケットを考えた、口周りが汚れにくくするという配慮重視のパスタであることはわかりました。それでは本当に、口周りが汚れにくいのでしょうか? スパゲッティを完食してすぐに紙ナプキンで口をふいてみたところ、気になるような黒や茶色が付かないことに驚きました。 そしてドキドキしながら鏡で唇や歯もチェック。感じ方には個人差があるでしょうが、旧メニューと比較すれば、他人に見られても恥ずかしくないレベルだと安心する人は増えるに違いありません。 ちなみに、スーパーなどで売られている市販のイカスミソースを食べてみたところ、しっかり黒くなりました! 今回のサイゼのイカスミ問題。このメニューに大きな注目が集まったという点で話題作りとしては大成功でしょう。 さあ、皆さんは食べに行きますか? <文/食文化研究家 スギアカツキ> 【スギアカツキ】 食文化研究家、長寿美容食研究家。東京大学農学部卒業後、同大学院医学系研究科に進学。基礎医学、栄養学、発酵学、微生物学などを学ぶ。現在、世界中の食文化を研究しながら、各メディアで活躍している。女子SPA!連載から生まれた海外向け電子書籍『Healthy Japanese Home Cooking』(英語版)好評発売中。著書『やせるパスタ31皿』(日本実業出版社)が発売中。Instagram:@sugiakatsuki/Twitter:@sugiakatsuki12
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