店と学校用品の看板の前で、エピソードを振り返る眞里子さん

　広島市南区大州のマツダ大州寮のそばを歩いていると、食堂「有宝（ゆうほう）」があった。「御食事処・ラーメン」の赤い看板の隣に「体操服」「給食着」の文字。組み合わせの妙に引かれた。 【地図と写真】食堂「有宝」　体操着・給食着・名札や赤白帽子も 　5年ほど前から地元の大州小の学校用品を置き始めたという。それまで取り扱っていた近くの洋服店が閉じ、話が回ってきた。店主の伊澤隆さん（76）は「ここらは個人商店がないし、学校も困っとったみたい」。子どもや孫が同小出身でもあり「学校のためなら」と引き受けた。 　小学5年の長女がいる会社員西山由記さん（42）は「体操服を買う際にサイズに迷っていたら相談に乗ってくれた。実家のような温かい場所」と、にっこりする。 　取り扱いを始めて、うれしい再会もあった。娘の元同級生が親になって来店し「覚えとる?」と声をかけてくれたり、息子の同級生の母が孫の物を求めに来たり…。妻の眞里子さん（74）は「店に一日中いることも多いから、昔の顔見知りに会えるとうれしいよね」。思わぬ縁に感謝していた。