フランスAIスタートアップMistralの新モデル続々 小型モデルと大型モデルの両面アプローチ
中小企業のAI活用にMistralの新モデルがもたらす可能性
この小型モデルMistral-NeMoは「高度なAI機能へのアクセスの民主化」を掲げ、120億のパラメーターと128,000トークンの広大なコンテキストウィンドウを備えていながらも、大規模なクラウドリソースなしでAIソリューションを実装、コストやデータプライバシーというAI導入の障壁に挑戦するモデルだ。 Mistral発のAIのビジネスユースケースは、ブログ記事執筆、コピーライティング、ソーシャルメディア投稿などのコンテンツ作成から、カスタマーサポートの自動化や他言語対応、ビッグデータ分析、コード補完やコード生成まで幅広い。たとえばMistral Large 2は、80を超える幅広いコーディング言語のサポートが可能だ。 これまではAI導入に予算を大きく割り当てることのできる大企業しか利用できなかったAIによる業務効率化を、より規模の小さな企業でも活用できるようになる可能性を示すものとして、Mistralの新モデルには大きな期待が寄せられている。
主要AI企業の最先端AIに匹敵するベンチマーク
これまで多額の資金を調達し評価額が約60億ドルに達したMistal AIだが、同社は、この資金を使ってコンピューティング能力をさらに増強、チーム規模を拡大し、OpenAIやAnthropicなどのライバル企業に対抗していく計画だと述べている。 今回発表されたMistal AIのAIモデルはどちらも大規模な128,000トークンのコンテキストウインドウを備え、長いテキストを処理および理解できるため、より一貫性のある、的確な出力が可能となっている。また、英語、フランス語、ドイツ語、スペイン語、イタリア語、中国語、日本語、韓国語、アラビア語、ヒンディー語など、幅広い言語に対応しており、AIが特定のタスクを遂行する能力を評価するベンチマークにおいても、非常に高いパフォーマンスを示している。
主要AI企業の最先端AIに匹敵するベンチマーク
Mistral Large 2のベンチマークは、コードの理解や生成、そして数学がこれまでのと比較し大幅に改善し、パラメータ数では大幅に上回るOpen AIやMeta、Google、Anthropic大手AI開発企業の最新モデルと競合する結果となっている。 数学的能力を測るMATH ベンチマークでは、71.5%のスコアを獲得したMistral Large 2は、Gemini 1.5 Pro、Gemini 1.0 Ultra、GPT-4、Claude 3 Opus など、他社モデルを大幅に上回る結果を残した。 また、学部レベルの知識、推論能力を評価するMMLUベンチマークでも、Googleの最大モデルであるGemini 1.0 Ultraを含む多くの独自モデルと同等か、それを上回る結果を示していた。 多言語対応の生成AIは、言語間でパフォーマンスに差があるものも少なくないが、Mistral Large 2はロシア語や日本語といったアルファベット以外の言語を含む対応言語範囲全体のMMLUにおいて、優れたパフォーマンスを維持していることも特徴的だ。 生成AIが驚くべき速度で進化し続ける中、Mistral発の新しいAIモデルのリリースは、規模を問わず様々な企業がより手軽に利用できる、効率的で強力なAIへの道を切り開く重要な一歩となったのではないだろうか。
文:大津陽子/編集:岡徳之(Livit)
【関連記事】
- AI人材育成、教育の「民主化」を目指し、OpenAI・テスラの元AIエンジニアがAI学習スタートアップ「Eureka Labs」を設立
- シリコンバレー/サンフランシスコが不動のトップ スタートアップエコシステムがもっとも発達した都市ランキング、東京、大阪、京都は?
- OpenAIがリアルタイム・データベーススタートアップを買収 その狙いとは?
- 日本最大級のピッチコンテスト「IVS2024 LAUNCHPAD KYOTO」開催! 優勝賞金1,000万円を獲得したスタートアップは?<後編>
- 日本最大級のピッチコンテスト「IVS2024 LAUNCHPAD KYOTO」開催! 優勝賞金1,000万円を獲得したスタートアップは?<前編>