阪神の丸、浅村争奪戦不参加は正解か?
最下位の阪神がストーブリーグでは脇役に回っている。新監督に矢野燿大氏が就任、来季への巻き返しは、このオフの大補強からスタートしなければならないはずが話題に欠く。佳境を迎えているFA戦線では、オリックスの西勇輝(28)と水面下で交渉を持ったが、即決とはいかず、ソフトバンク、横浜DeNAとの争奪戦となっている。 対照的に原辰徳監督を迎えた巨人は積極的だ。 FAでは広島の丸佳浩(29)、西武の炭谷銀仁朗(31)にアタック。オリックスを戦力外になった中島宏之(36)の獲得も濃厚で、マギーを切って新外国人にも札束をはたく準備ができている。日ハムと契約が切れるレアードの名前も候補に挙がっている。 パ・リーグでは5年ぶりにFA参戦を決めたソフトバンクが西武の浅村栄斗(28)、西のダブル獲得へ動き、その浅村を巡っては、オリックスが断りを入れられ、楽天との一騎打ちとなっている。またこれまでFA補強に消極的だったロッテがBクラス脱出に本気も本気、千葉出身の丸の争奪戦に相当の条件で名乗りを上げている。 これらの他球団の本気度に比べると阪神のオフの動きは少々物足りない。 阪神の最下位理由のひとつは4番に予定していた新外国人ロサリオの期待外れ(打率.242、8本塁打、40打点)に代表される打撃不振だ。チーム打率.253、577得点はリーグ5位で、85本塁打はリーグ最下位。打撃補強が、最大テーマの阪神にしてみれば、本来の補強ポイントは投手ではなく野手だった。 「投手は何人いても困らない」が球界の常識だが、ソフトバンクと同じく野手とのダブル獲得に動くべきではなかったか。 福留孝介は41歳、2年前にFAでオリックスから移籍した糸井嘉男も膝に爆弾を抱える37歳。若手の高山俊(25)、中谷将大(25)あたりも伸び悩み、ドラフトでは“外れ外れ1位”で足のある近本光司(24)を大阪ガスから獲得したが“非力”でプロへの順応には時間がかかる。それらを考慮すれば、丸はピタリとはまる補強ポイントだったのだ。 また内野を見渡しても、ひとつとしてレギュラーが確定しているポジションはない。二塁、一塁、三塁のできる浅村を取れれば、なんとでもコンバートで動かせる。 まるでギャンブルのように未知数の新外国人よりも、これだけ阪神の補強ポイントにはまる実績のあるFA選手が市場に出たのだからアクションを起こすべきだったのではないか。 しかも、広島からは、金本前監督、引退した新井貴浩氏の2人をFAで獲得した過去実績があり、大阪桐蔭出身の浅村とは関西出身という縁がある。 だが、阪神は「生え抜きをチーム内で育成する。マネーゲームには不参加」の球団方針を貫いた。 即戦力の可能性のある投手は、ドラフトで獲得しておき、FAで中軸となる野手を補強するプランがあっても不思議ではなかったが、阪神の方針は、むしろ逆だった。 この球団方針は果たして正しかったのだろうか? 元千葉ロッテの里崎智也氏は、「決してFA選手を取らないことは悪ではなく、取ることも悪ではない。ただ一般社会と野球界も同じで、いい人材を好待遇でヘッドハンティングをしていくのが企業努力。それができる資本力があり、企業としての目標が優勝であるのならば、そのFA選手が活躍するか、しないかの議論はさておき、そういう努力はすべきだろう。また野球界の場合は、FAでライバルチームの戦力を落とすという効果もある」というFAに関する持論を展開した。