阪神の丸、浅村争奪戦不参加は正解か?
資本力で言えば阪神はある。 “解任”した金本前監督にむこう2年分の給料を払い、2年契約だったロサリオの2年目の違約金を払うほどで、億を超える単位の選手は、本社の取締役会の承認が必要だが、新任の藤原新オーナーが主張すれば承認は取れるだろう。 FA、補強によるチーム改革が得意だった故・星野監督が2001年オフに監督就任して、“お金をかけても優勝してリターンする”という今までの阪神の社風になかった球団方針を持ち込んで阪神は変わった。 巨人、ソフトバンクに負けないオフの補強を仕掛け、暗黒時代を脱出。常に優勝争いに参加できるチームとなり、観客動員も飛躍的に伸びた。 故・中村勝広GMは、「阪神と巨人は勝たねばならない宿命がある。せっかくFAやメジャーからフリーになる選手がいても何もしなければファンに顔向けができない。だから無理だとわかっていても獲得の姿勢は見せなければならない」と、語っていた。 実際、福留孝介、城島健司、西岡剛らのメジャー凱旋組は、そういう争奪戦の末、獲得した選手だ。 だが、その一方で、大型補強選手にポジションを渡すことで若手育成が阻害されるのではないか、という根強い議論もあった。大型契約で獲得した選手が不振に陥ると“不良債権”と批判もされた。 大型補強に手を染めず生え抜きを鍛えてチームを強くした広島型のチーム強化への転身が、ここ数年、阪神内で声高に叫ばれてきた。球界の流れも、確かに大型補強の時代から生え抜き育成の時代に変わってきている。巨人を戦力外になった村田修一氏に結局、どのチームも触手を伸ばさなかったのは、その象徴だろう。 これまでTHE PAGEにコメントを寄せてくれている元西武、ヤクルト監督の広岡達朗氏も、「広島型のチーム強化が理想。教えることを勉強した監督、コーチが徹底して、素質のある生え抜きの若手を正しく鍛え、彼らが育って定位置を獲得するようになればチームは常勝軍団になる」という考え方を支持していた。 だが、「生え抜き育成」をテーマにタクトを任せた金本監督の3年間で、その成果は出ずに最後は最下位に終わった。 故・中村GMの言葉ではないが、阪神は、「生え抜きの若手を育成しているので負けても大目に見て下さい」が通用する球団ではない。ファンは優勝を願い、打倒巨人、打倒広島を願う。「生え抜きの育成」が、結果的に停滞してしまった今こそ金庫を開き「大型補強と育成」の両輪でチームを立て直すタイミングだったのではないか。 たとえ西の補強が成功しても、来季のペナントの行方を左右することにはならないだろう。 むしろ勝ち負けの命運を握っているのは、投打の中心に置く予定の新外国人選手である。 それならば、来る、来ないは別にして、資金を投入して、移籍しても成功の可能性が見込めそうな浅村、丸の争奪戦に参加すべきだったのではないか。何もオフに主役になる必要はないが、阪神の企業努力に疑問を抱くのは筆者だけだろうか。 (文責・本郷陽一/論スポ、スポーツタイムズ通信社)