2025年度政府経済見通しと経済政策の課題
成長戦略、構造改革を通じた実質賃金の持続的上昇実現が重要に
政府の2025年度の経済財政運営の基本的態度には、「賃金上昇が物価上昇を安定的に上回る経済を実現し、『賃上げと投資が牽引する成長型経済』への移行を確実なものとしていく」と記述された。 2025年度に賃金上昇が物価上昇を上回り実質賃金が上昇に転じる可能性は高いだろう。また労働生産性上昇率がプラスである限り、実質賃金上昇率のトレンドがプラスである可能性が高い。 ただし、物価が大きく上昇するような局面であっても実質賃金が安定的に上昇を続けるためには、実質賃金上昇率のトレンドを決める労働生産性上昇率の水準が比較的高くなる必要がある。それを実現するためには、賃金、所得を直接引き上げる政策ではなく、成長戦略、構造改革を通じた経済の潜在力向上が必要となる。 「賃上げと投資が牽引する成長型経済への移行」という政府の目標は、分かりづらい面もある。そもそも、賃金という「所得面」と投資という「需要面」を並べていることが適切ではないのではないか。 12月23日に、新しい地方経済・生活環境創生本部は、「地方創生2.0の起動に向けた提言」を石破首相に示した。この地方創生は単に地域経済の活性化にとどまらず、女性活躍、労働市場改革、働き方改革、東京一極集中是正なども含み、国全体の経済構造を変えることを目指す意欲的な取り組みだ。 石破政権には、是非、地方創生を中核に据えた成長戦略、構造改革を通じて、経済の潜在力を高め、実質賃金上昇率が先行き高まっていくとの期待を国民の間で高めるようにして欲しい。 (参考資料) 「政府経済見通し」、2024年12月25日、内閣府 木内登英(野村総合研究所 エグゼクティブ・エコノミスト) --- この記事は、NRIウェブサイトの【木内登英のGlobal Economy & Policy Insight】(https://www.nri.com/jp/media/column/kiuchi)に掲載されたものです。
木内 登英