エベレスト世界初登頂から60年、なぜ登山家はこの山に魅せられるのか
日本人の登頂成功者数は世界第3位
5月はエベレストの季節である。危険な突風を吹かせるモンスーンが、まだ出現しておらず、比較的、気候が続けて安定しやすく降雪期にも入っていない。60年前、エドモンド・ヒラリー卿とシェルパのテンジンが、エベレスト初登頂を果たしたのも5月29日。80歳の三浦雄一郎さんが、最高年齢の登頂記録を塗り替えたスケジュールが、ちょうど、この60周年のタイミングに重なったのもそのためである。
ヒラリー卿が、この世界最高峰(現在、8848mとされている)を極めて以来、登頂成功者は、4000人を超えたとされている。国別に統計すると、日本人は、ネパール、アメリカに次いで第3位に入っている。 日本人の初登頂は、ヒラリー卿より17年後の5月11日に日本山岳会が遠征隊を組み、松浦輝夫と後に冒険家として有名となる植村直己の2人が成し遂げた。初の南東稜ルートからの成功だった。植村さんは、その際に、南峰に残されたヒラリー卿の酸素ボンベを見ている。そして女性として1975年に世界初登頂したのが、他ならぬ日本人の田部井淳子さんである。山のムック本を編集した時に、田部井さんを長くインタビュー取材をしたことがあった。運よくエベレスト挑戦の話も聞くことができた。 「若い頃は、何がなんでも頂上にこだわっていました。女だけで、海外の山に登るようになって、やっぱりエベレストだよね、となったんです。でも、当時は、入山許可がなかなか出ずに振り返ってみても、計画、人集め、資金集めから装具の整備、トレーニングと、ベースキャンプに辿り着くまでが、エベレストの頂上を極めるよりも大変でした。準備時間は1400日です。6400メートル地点のキャンプで、雪崩に遭遇して、シェルパに掘り起こされ、立つことがやっとという状態になったのですが、幸い、事故に巻き込まれた人はいませんでした。それでも中止と判断された時は、『逆に降りる方が危険』と拒否して昇ったんです。若かったですね(笑)」。