小型特殊自動車ライガーに乗っていたときのお話 「田舎の暮らしは楽しいよ」 - 音羽山観音寺後藤住職の花だより
秋雨の降る奈良県桜井市の尼寺「音羽山観音寺」。10月初旬のこの日、観音寺にだどり着くまでにも、雨の日ならではの出会いがありました。 [写真]雨の観音寺本堂
音羽山の中腹にある観音寺までの参道では、いろいろな出会いがあります。 雨降りのこの日、レインコートを着て山を登っていると、参道の真ん中にこぶし二つ分ぐらいの石のように見えるものがありました。あまりにも道のど真ん中にあるので、のけようと思ってよく見ると、どうやら石ではないようで……。ピョンとはねて道の端に避けてくれました。写真を撮ったので、寺について住職に見てもらいました。 「あら、大きいガマガエルね。ウシガエルかしら」 こんなに大きいカエルを見たのは初めです。その後、川のように水が流れる坂道を歩くサワガニにも遭遇。その話を住職にすると、過去の驚きの体験を話してくれました。 後藤住職が観音寺に入ったのは平成元年のこと。当時はまだ今のような参道もなく、車ではもちろん通行できないので、ライガーという小型特殊自動車で山を上り下りしていたとのこと。時速1kmか2kmぐらいのスピードしか出ない乗り物だったようです。
「昔、ライガーに乗っている時にサワガニが横切っているのに気付いたの。つぶしたらかわいそうだから避けようと思ったら、土手に寄りすぎて前のタイヤが落ちかけたの。そーっと降りて助かったのよ」 住職は笑顔で話しますが、驚きの体験ですね。山寺の暮らしはさぞ大変だと思います。山に来た当所は風呂を沸かすのも、まずは薪を集めてからだったそう。それでも住職は、 「田舎で生まれ育ったから、嫌だと思ったことはないわ。田舎の暮らしは楽しいよ」と明るく話します。 そういえば、前回9月初旬の取材のとき、スズムシはまだ鳴いていませんでしたが、この日はリーンリーンと大きな声で鳴いていました。いつ鳴き始めたのか聞くと、 「あれからすぐに鳴いたのよ。スズムシバナが咲いて数日後」 やはり自然の摂理は正しいようです。どのタイミングで鳴くのか聞いてみると、 「24時間鳴いてるわ。前に、風情があると思って無量庵に置いておいたら、宿泊者にうるさいって言われたわ」
山寺に響く虫の声は趣あるように感じますが、あまりにもスズムシの声が大きかったのでしょうね。 音羽山観音寺 山の中にある尼寺。桜井市南音羽。 JR・近鉄桜井駅下車、桜井市コミュニティバス談山神社行、下居下車、約2km。 火曜日閉門。17日の御縁日が火曜日の時は開門、翌日閉門