混迷するウクライナ情勢で注目 「親ロシア派」とはどんな人たち?
ウクライナ情勢が流動化して以来、「親ロシア派」という言葉を耳にする機会が増えました。ウクライナ東部の分離独立の動きが活発化した際や、最近ではマレーシア機墜落の件でもクローズアップされています。親ロシア派が拠点とするウクライナ東部はロシアと隣り合う場所にあります。親ロシア派とは、いったいどんな人たち、勢力なのでしょうか。
「親ロシア派」と「東ウクライナ住民」
「親ロシア派」の中核は、今回ロシアから送り込まれた武装分子だといいます。クリミアで成功した、「地元住民が希望するからロシアに併合する」という手法を、東ウクライナでも使うことを狙っていたのでしょうが、東ウクライナ住民は全員がロシア併合を求めているわけではないので、現在は孤立した暴力集団と化しています。
その核にはロシア軍の諜報機関員がおり――例えば親ロシア派が作った自称「ドネツ人民共和国」の国防相ストレリコフ――、その周囲にはロシアで募集された、あるいは自分の意志でロシアからやってきた右翼的な青年達、更に地元ウクライナの他都市で募集された青年たちが加わっています。彼らの指揮系統は一本化されておらず、統制が取れておりません。 「親ロシア派」は東ウクライナの都市をいくつか制圧していましたが、ウクライナ政府軍の攻撃を受けて撤退、現在は中心都市ドネツクとその周辺を死守しています。マレーシア機撃墜は、彼らの勢力範囲で起きたわけです。 東ウクライナの地元住民というのは、ロシア語を母語とする者が約50%、国勢調査で自らを「ロシア人」と申告する者も平均30%程になっています。しかし、ロシア語を話して「ロシア人」だからロシアとの併合を求める、ということにはなっていません。台湾人が中国との合併を忌避するのと同じです。 東ウクライナの「ロシア人」の中には、戦乱と農奴制の中世ロシアを逃げ出して、ここで自営農となったコサックの子孫がいます。また近世になってロシア本土から移住してきたロシア人も、工業化が進んだ東ウクライナでの生活に落ち着いており、ロシア本土に親戚を持ちながらも、ロシアとの併合は望んでいません。因みに地元住民の宗教は「ロシア正教」が殆どですが、教会組織はモスクワ系とキエフ系に分かれています。中東とは異なり、宗教は紛争の原因とはなっていません。