混迷するウクライナ情勢で注目 「親ロシア派」とはどんな人たち?
プーチン大統領の思惑は?
では、プーチン大統領は「親ロシア派」をなぜ支えているのでしょうか。彼は、東ウクライナの併合までは目指していません。人口200万のクリミアと違って、1500万程の人口を抱える東ウクライナを併合すれば、ロシアの財政は破綻するでしょう。また西側の経済制裁が本格化すれば、原油・ガスの輸出収入に依存して繁栄を演出してきただけのプーチン大統領政権はひとたまりもないからです。 プーチン大統領は、東ウクライナの併合を狙って暴走しがちな「親ロシア派」を抑えるのに苦労してきました。「親ロシア派」は今でも統制が取れておらず、その象徴がマレーシア機撃墜事件だったと言えます。それでもプーチン大統領が「親ロシア派」を見捨てないのは、使用価値を認めているからです。 それは、東ウクライナに拠点を確保しておかないと、西側がウクライナを完全に抑え、NATO加盟の方向に持って行ってしまう。そうなれば、ロシアの天敵NATOの軍がロシア国境に接して配備され、ロシアの政権転覆もしかけやすくなる。従って東ウクライナに拠点を確保しながらウクライナ政府、そして西側と交渉して、東ウクライナを「緩衝地帯」(例えば非武装地帯にするなど)にしたい――このような思惑です。 ロシア正規軍は、東ウクライナの親ロシア派勢力にあからさまな支援はできません。プーチン大統領は、親ロシア派勢力とは無縁を装っています。関係を認めれば、西側が制裁を強める口実にするからです。ロシアのマスコミは、マレーシア機撃墜がウクライナ当局によるものであることを国民に吹き込んでいます。 このようなプーチン大統領を西側は強く指弾していますが、親ロシア派勢力もプーチン大統領が本気で支援してくれないとして怒り、恨みを表明するようになっています。指導者の宿命として、プーチン大統領は外国からも手勢からも非難されているわけですが、クリミア併合で盛り上がったロシア大衆のプーチン大統領支持はまだ退潮しておりません。 (河東哲夫/Japan and World Trends代表)