フェラーリ新型「12チリンドリ」を発表前にマラネッロで見た印象とは? 価格は6650万円から「デイトナ」オマージュに見えてもいいじゃない
デイトナオマージュではないというが……
まだまだ驚きはあった。それはもちろんデザインだ。アンベールされた瞬間、脳裏をよぎったのはつい2週間前にフィオラノで試乗したばかりのデイトナこと「365GTB4」、それも初期型のプレキシノーズモデルだった。チーフデザイナーのフラビオ・マンゾーニ氏はデイトナオマージュであることを否定したが、そう見えるのだから仕方ない。 なかでもフロントノーズはデイトナデザインのモダナイズだ。中央のブラックアウトされた部分はプレキシグラスモデルとよく似るし、何よりサイドに回り込んだライトまわりのデザインがそっくり。さらにデイタイムライトとしても機能するライト下のフラップはその昔の分割バンパーに見えなくもない。さらにはフロントフェンダーからリアエンドへと至る水平のダブルキャラクターライン(リアフェンダーで切り取られるあたりも!)、ルーフからリアエンドへ向かっての柔らかなラインなどもデイトナを彷彿とさせる。ちなみにフロントフードは「プロサングエ」と同様のコファンゴスタイルで、前ヒンジ開きだ。 真横からの眺めがまたユニークだ。ホイールベースが20mm短くなって、ふくよかなリアフェンダーの存在感と尖ったロングノーズが極端に強調される。小さなキャビンはかなり後方に位置し、まるでリアフェンダーによって支えられているかのよう。V12エンジンがフロントミッド(前アクスルより後ろ)に収まっているとは思えないほどである。
ブラックエリアの変更は許されない
驚くのはまだ早い。「12チリンドリ クーペ」のデザインで際立って個性的なのは、リアセクションだ。斜め後ろ、やや上方から見るとデザインチームが “デルタウィングシェイプ”と呼ぶユニークなモチーフがよくわかる。まるで前方へと突き進む大胆な矢印だ。ゴージャスでデイトナライクなフロントとは対象的にウルトラモダンなデザインである。 ルーフからリアエンドにかけて黒、ボディ色、黒と大胆に3分割されている。ルーフは通常ガラスだが、カーボンファイバーパネルを選ぶこともできる。これらとサイドウインドウがひとつのブラックエリア。もうひとつのブラックエリアがリアウインドウとリッド、そして新たな空力アイテムである左右のエアロフラップである。2つのブラックエリアの間をグラマラスなリアフェンダーからピラー、ルーフの一部へと続くボディ同色エリアがブーメランのように区切っているのだ。このモチーフはインテリアのセンターコンソールにも使われている。 フラビオ・マンゾーニいわく、「デザイン上、最も重要なモチーフ」ということで、今のところ顧客がブラックエリアをカーボン以外の色やマテリアルに変更することは許すつもりはないらしい。一方、「812GTS」とまったく同じ開閉式電動ハードパネル(14秒で開閉、45km/h以下で操作可能)を使った「12チリンドリ スパイダー」の方はこの独特なモチーフが若干弱まって見える。クーペの方が斬新でかっこいいと思うのだが、どうか……。 もちろんこういったユニークなエクステリアのデザイン(のみならず床下も含めて)はエアロダイナミクス性能を可能な限り高めた結果だ。ちなみに左右のリアフラップはダウンフォースが積極的に必要とされる速度域(40~300km/h)において加速度に応じオートで作動する。