「冬に浴衣」「ポリの着物」「キラキラの複製」…観光客を当て込んで創造した「日本」では永遠にレベルアップは果たせない アレックス・カー×清野由美
◆稚拙化を防ぐには 維持管理のためにオリジナルをはずし、複製に入れ替えるのは仕方ないことでしょう。今の時代は幸いなことに複製技術が非常に発達していて、近くで見てもオリジナルかコピーか、見極められないほどすばらしいものができるようになっています。 しかし、そのような技術力があるにもかかわらず、近年展示された二の丸御殿の襖絵や壁画は、金色のラッピングペーパーのような質感でした。 稚拙化を防ぐには、管理者側の信念がまず問われることになります。二条城でも、「ここは将軍と大名が謁見した格式高い場所である」という認識が管理者側にしっかり根付いていれば、このような複製のクオリティにはならなかったでしょう。 文化財を管理している人たちには、「保存」と「維持」だけではなく、次世代の日本人と訪日外国人に、日本文化の真髄を伝える義務があります。予備知識のない観光客だからこそ、質の高いものを見てもらい、その「目」を底上げする努力が必要です。 幸い、オリジナルの襖絵は敷地内にある「二条城障壁画展示収蔵館」に保管されています。二条城を訪れる人は、二の丸御殿を回った後に、こちらで本物を見ることをおすすめします。 観光には教育的な側面も含まれます。分からない人たちに合わせて稚拙化を行うのではなく、最高のものを親切な形で提供してこそ、文化のレベルアップは果たされるのです。 ※本稿は、『観光亡国論』(中公新書ラクレ)の一部を再編集したものです。
アレックス・カー,清野由美
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