「宿直代」も、出張時の「特急券」も“自腹”…国を提訴する現職判事が語る、裁判官の“トホホな待遇”の実態
「地域手当の格差」がもたらす裁判官の報酬への不満
私は、ごく普通の裁判官が都会と地方を3年ごとに転勤を繰り返す人事慣例になっていることを江戸時代の大名の「参勤交代」と同じだと気が付いた。妻子を東京に置いて地方に単身赴任する男性裁判官が多いことも、「参勤交代」とそっくりである。 かつては、地域手当(当時は都市手当)が高い任地から低い任地に転勤する場合は、前任地の地域手当を3年間維持するという制度になっていたので、報酬面での不利益は緩和されていた。しかし、その制度もなしくずしに縮小されている。 裁判官については、仮に地域手当を含む報酬を全国一律にしたとしても、おそらく家庭の事情などで東京近辺の任地を希望する者の方が多いのではないかと思われる。 それに加えて、今のような地域手当の格差があれば、都会から地方への転勤に応じる裁判官は損をすることになる。 私も含め、数多くの裁判官の報酬に対する不満は、主にこの点に集中している。 他方で、東京を出ないまま異動を重ねる最高裁事務総局等の「裁判をしない裁判官」たちは、高率の地域手当を継続的に保障されることになる。 裁判官には、裁判所法48条に基づく転勤拒否権があるのだから、もしも地方への赴任を拒否する裁判官が相次いだら、最高裁は一体どうするつもりなのだろう。 裁判官の報酬の憲法・裁判所法上の特殊性を全く考慮していない一般職の公務員の給与制度を、そのまま受け入れ続けている最高裁の態度には、疑問を禁じ得ない。
裁判官の「宿直」に手当は出ない
裁判官には休日手当・深夜手当がない。 令状当番として休日に登庁しても、宿直として泊まり込んでも、裁判所庁舎の勾留質問室を使用した勾留の請求が来なければ、他の令状を何件出そうと特殊勤務手当は付かない。 これは、かつて、休日や夜間は警察が裁判官の官舎に令状請求に来ていた時代の名残のようだ。現状はすべからく登庁して令状請求に対応するようになっているのに、全く反映されていない。「裁判官が勝手に登庁している」という扱いなのだろう。