「宿直代」も、出張時の「特急券」も“自腹”…国を提訴する現職判事が語る、裁判官の“トホホな待遇”の実態
電車の本数が限られる地方でも「特急料金」は自腹
通勤手当についても、裁判官が一部自己負担となっている。特急料金は原則として自己負担である。通勤どころか、出張の際も特急料金を自己負担せざるを得ないことがある。 たとえば、大分地家裁には「一人支部」があり、本庁の裁判官が一人支部の支部長を兼務していたが、本庁から一人支部への支部長裁判官の毎週の出張(填補(てんぽ))についての特急料金は支給されなかった。 大分県ではJRの本数が都会に比べて極めて少ないため、事実上は特急に乗らざるを得ない。そのような実態があるにもかかわらず、特急とそれ以外との所要時間の差が国家公務員の給与関係法令所定の時間数に満たないためという理由だけで、特急料金は支給されなかった。 一人支部の支部長は押しなべて特例判事補(任官後5年以上10年未満)が多く、それほど基本給が高いわけでもないので、非常に気の毒であった。 私も特急料金を自己負担している。さいたま地家裁川越支部の在任中、週1回、さいたま家裁飯能出張所に填補に通っていた。これも、所要時間の差が法令所定の時間数に満たないため、毎週、池袋と飯能の間を往復する西武の特急料金を自己負担していた。 また、現任地の津地家簡裁に名古屋から通勤する裁判官は、私も含めて少なくないが、全員が近鉄の特急料金を自己負担している。 このような不合理な通勤手当の基準も、おそらく東京をはじめとする都会の鉄道事情を前提にして設定したものと思われる。通勤手当さえ確保しようと努力しない最高裁事務総局の「裁判をしない裁判官」たちは、職務怠慢と言うほかない。
竹内浩史(裁判官)