市船で磨かれた信念「やりたくないことをやり続ける」。清水内定FW郡司璃来、冬の選手権に懸ける想い
日大藤沢戦ではピッチ上で口論
そして迎えた今年、郡司は苦しい経験を経て、さらに逞しくなった。 「もう最後の1年なので後悔はしたくないんです。チームのために走る、守備をしてから攻撃をするということは、市船に来るまでは苦手だったというか、やりたくないことでした。1年生の時も『やりたくないな』と思っていましたが、波多監督やスタッフの皆さんがいつも『やりたくないことをできるようにならないと、上には行けない』と言い続けてくれたし、常に僕にそれを強く要求してくれた。 だんだん守備をするようになって、逆に良い形で奪えて、自分がやりたいプレーができるようになりましたし、チームにとっても自分にとってもプラスが大きいことに気づきました。自分の好きなことしかしない選手だった僕が、今では『チームのためにやらなければならないこと』として、当たり前になっています」 感情的になるシーンはまだあるが、昨年と比べると大きく減った。今年のインターハイでは2回戦の大津との優勝候補対決では、前線からの鬼気迫るハイプレスを見せ、何度も馬力ある突破を披露。1、3回戦で1ゴールずつ挙げて、ベスト8入りの原動力となった。 日大藤沢との準々決勝。チームは前半終了間際に失点し、0-1の状況で試合終盤になると、猛攻を仕掛けた。しかし、ここで郡司とチームメイトがピッチ上で口論となり、試合にも勝てなかった。 ただ、この言い合いは端から見ていて、ネガティブなものではなかった。この試合、確かに市船はリズムに乗れない展開が続き、全体的な雰囲気は良くなかった。お互いが持ち味を発揮できないまま試合が進んだことで、郡司なりに喝を入れた言葉が発端だった。お互いが「この状況をなんとかしないといけない、勝ちたい」と思ったがゆえの衝突であった。 「あの試合は自分たちでリズムを崩してしまった。立ち上がりから試合の入りが悪すぎて、パスが全然回らなくて、全体がイライラしてしまっている雰囲気でした。ここで立て直せないと、インターハイや選手権のようなトーナメントではズルズルと行ってしまって負けてしまう。それを分かっていたのに、修正できないまま時間が過ぎていったので強く言ってしまいました。 でも、僕らにとってはチームとしての課題と教訓がものすごく色濃く出た試合だったので、価値があるものだったと思います。チームとして1つになれないと、ああいう雰囲気になって、そのまま結果につながってしまうということを全員が気づけたことで、よりチームとしてのまとまりが出たと思います」 実際に試合後は郡司をはじめ、選手たちがしっかりと話し合っていた。その後もチームとして話し合いを行ない、スタッフともコミュニケーションを密にとった。郡司の言葉通り、この日大藤沢戦を境にチームはまとまり、郡司自身も仲間を鼓舞する声が増えた。
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