「尹錫悦の内乱」の根源である検察、国を飲み込む(2)
(1の続き) ■「検察が政治や善悪を決める唯一の物差し」 プロクラトゥラの全能の権力と、それに対するベニス委員会の批判を見て、どこかの国が思い浮かびませんか? 私は韓国が思い浮かびます。 捜査・起訴権を独占し、自分たちだけの強固な城を築いてきた検察は、大統領尹錫悦(ユン・ソクヨル)を作り出す土壌となり、尹錫悦政権の発足で国家権力そのものを接収するに至りました。検察の地位が高まり、権限が強まったのはもちろん、大統領室、首相室、国家情報院、金融監督院、国家報勲部、法制処など、国政全般の要職に検察出身者が進出しました。国政の要である人事関係者も検察出身者が占めています。こうして検察出身の特定集団が国政の前面に立って一元的な統治体系を形成するとともに、「親尹(錫悦)検事」が掌握した検察は政権と一体のように動いてきました。検察は「生きている権力」の疑惑には目をつぶり、政治的反対者を標的とした捜査に露骨に集中しました。誰としてこのような検察の暴走をけん制できませんでした。 検察は刑事司法の領域を超え、国家運営を左右する政治集団と化したのです。全体主義の遺産である特異な怪物検察、プロクラトゥラが、21世紀の大韓民国でよみがえったかのようです。参与連帯のハン・サンヒ共同代表(建国大学法学専門大学院教授)は、韓国の検察の現実と危険性を次のように診断しています。 「これまでは、少なくともいかなる政権であれ、政治領域において検察の役割を規定していたとすれば、今や検察は政治の内容を決定し、政治の方向性を決定し、韓国社会の善悪を決定する唯一の物差しとなって動いていく。政治検察が今や検察政治の領域へと転じ、私たちの暮らしを歪曲したり、変質させたり、または場合によっては退行させるという、このようなことをただ耐えることはできない」(2023年5月、参与連帯『検事の国、1年』発行ブリーフィング) ■12・3内乱の予告編だった検察時代の「小さな内乱」 その退行は最終的に、12・3内乱事態へとつながりました。「尹錫悦の内乱」の根源は「怪物検察」にあります。 検察という国家権力を私有化して自らの政治的野望のために、そして家族の犯罪行為を覆い隠すために用いた検察総長「尹錫悦」は、大統領になってからもその権力の私有化のやり方をそのまま繰り返しました。自身に権力を委任してくれた国民を尊重し恐れる姿勢は、一瞬たりとも見られませんでした。あげくの果てに非常戒厳宣布権、軍の統帥権などの大統領の権力を自分のものであるかのように、自らの利益のために手前勝手に振るいました。12・3内乱です。 検察時代から、検事尹錫悦の権力私有化は過去に例がないほど露骨でした。検察総長時代、各種の犯罪疑惑が持たれていた義母のチェ・ウンスン氏をかばう文書が、最高検察庁によって作成されました。国民のために働くべき公組織が、チェ氏の個人弁護士役を果たしたのです。最高検察庁は当時、主要事件の担当判事を査察した文書も作成しました。また検察総長の権限を用いて、自身の最側近であるハン・ドンフン検事長(当時)に対する監察と捜査を妨害しました。「脱原発捜査」、「キム・ハグィ違法出国禁止に対する捜査」などの政治捜査を大々的に繰り広げ、自身の危機を免れるとともに政治的な踏み台としました(脱原発事件で起訴された産業通商資源部の公務員たちは今年5月、最高裁で無罪判決を受けています。キム・ハグィ違法出国禁止事件で起訴された人々も全員が先月に控訴審で無罪を言い渡されています)。大統領になってからは、「尹錫悦系」の検事たちによるキム・ゴンヒ氏の特別扱いの調査や嫌疑なし処分などで、検察権の私有化が頂点に達しました。 ベニス委員会はプロクラトゥラの過度な権限を批判しつつ、「検察が責任を取らない第四の権力となる危険性」を指摘していますが、「責任を取らない」というのは「統制を受けない」、すなわち「勝手にふるまう」ことを意味します。これは権力の私有化へとつながります。それが韓国でその通りに現実化しています。 権力が私有化されると、権力行使の原則は消え去り、権力そのものだけが残ります。その権力はもはや文明の産物ではなく、野生動物の暴悪さとなります。尹錫悦の検察が検察権行使の原則である中立性、公正さ、客観性などを価値なきものとして廃棄したように、大統領尹錫悦は非常戒厳の要件と憲法的限界を黙殺しました。国民の命と安全を守るために使用すべき軍の統帥権を、国民に銃口を向けるために使用しました。歪んだ検察権行使の悪癖をそのまま再現したのです。そういった意味で検察権の私有化は、より大きな内乱を予告した「小さな内乱」だったわけです。 ■権力の私有化を不可能にする「不寛容の改革」を 嘆かわしいのは、誤った検察権行使で「成功」を収めた検察総長尹錫悦の記憶が、大統領尹錫悦の無謀な内乱の敢行にも影響を及ぼしたはずだということです。尹錫悦による検察権の私有化を黙認、ほう助したすべての人々が責任を感じなければならない理由はここにあります。さらには、このような権力の私有化を可能にしていた検察の構造そのものを改めなければならない理由でもあります。 「権力はどこから生じて、何のためにどのように用いるべきか」を、すべての権力者と権力機関に深く刻みつけなければなりません。軍や検察などの権力機関の私有化がもはや不可能になるよう、隙間のない民主的統制装置を構築しなければなりません。12・12クーデターと5・18市民虐殺に手を染めた軍の私組織「ハナ会」を清算したように、不寛容の改革を実現しなければなりません。それこそが、今回の内乱が残した最も重要な課題でしょう。 パク・ヨンヒョン論説委員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )