ドイツ自動車業界の労働者、防衛企業が受け入れ-チーム丸ごと雇用も
(ブルームバーグ): ドイツ自動車業界の労働者に、救いの手が差し伸べられている。同業界が苦境に立たされ、人員削減をまさに進めようとしている時、防衛産業は雇用を増強している。
ミュンヘンに拠点を置くレーダーメーカーのヘンゾルトは、軍事関連の受注急増に対応するため自動車部品会社の2社からチームを丸ごと雇い入れる交渉を進めていると、同社のオリバー・デーレ最高経営責任者(CEO)が明らかにした。雇用するチームの人数は100人に上るケースもあるという。
13日にブルームバーグテレビジョンのインタビューに応じたデーレ氏は「自動車業界の現在の苦境は、われわれにとってはまさにチャンスでしかない」と語った。
デーレ氏によると、今年に入りヘンゾルトは既に約1000人を採用し、ソフトウエアエンジニアから成るチームを加入させることになるという。採用交渉を行っている相手の自動車部品メーカーを明かすことは控えた。ヘンゾルトは来年も同程度の人員増加を見込んでおり、新たな提携やM&A(企業の合併・買収)の可能性に対しても積極的になる計画だと、同氏は述べた。
ウクライナや中東での戦争が続き、トランプ米次期大統領が安全保障への強力なコミットメントを求める中で、欧州各国で国防支出は増加。防衛産業には強い追い風が吹いている。トランプ氏は欧州の同盟国に軍事費の負担増を迫っているが、各国の政治指導者らは資金を使って国内の企業や雇用を支援しようとしている。
一方、欧州の自動車業界は電気自動車(EV)の需要低迷と中国との競争激化で苦戦を強いられている。コンチネンタルやボッシュ、シェフラーなどの部品メーカーは、低迷の深刻化に伴い人員を削減した。
コンサルティング会社のプライスウォーターハウスクーパース(PwC)によると、デジタル化とオートメーションで現在の仕事上の役割が時代遅れになるため、ドイツの自動車業界では現時点で雇用されている77万人の人員は2030年までに12%減少する見通しだ。人員削減を模索するフォルクスワーゲンは、労働組合との緊迫した協議を続けている。