お寺にDJ、まるでクラブ 厳格な祖父は大反対だったが…36歳住職の挑戦
長野県須坂市日滝にある曹洞宗の満龍寺は新月の日になると本堂でミラーボールが輝き、酒を提供するカフェや古着店も「開店」する。2017年10月からさまざまな催しを企画し、一般的な寺院とは趣を異にする。そこには27代目住職の高津研志さん(36)の「宗教離れが目立つ若年層に、少しでも寺に足を運ぶきっかけを」との強い思いが込められていた。(いなづか 弘樹) 【写真】まるでクラブ ミラーボールの輝きで鮮やかな本堂
日本人の父親とドイツ人の母親の長男
高津さんは、先代住職で日本人の父親とドイツ人の母親の長男として長野市で生まれ、須坂市で育った。高校卒業後に僧侶資格を取得して満龍寺で働こうと考えたが、両親に視野を広げるよう勧められて2010年にドイツに渡った。約5年半、フランクフルトやベルリンなどの農場やスーパーで働いた。
街中には元ガラス工場のクラブや廃船を改装したレストランなどが並び、「再利用の技術に圧倒された」。「外観や内装をほとんど変えずに生かしていた」といい、古いものを大切にしながらも新しい姿に変化させていく価値観や行動に感銘を受けた。
余暇を過ごす場所の多さにも圧倒された。川岸に設置されたベンチや公園など、のんびりと過ごせる場所が多く、「みんなが少しの空き時間でも楽しく過ごしていた」と当時を振り返る。
厳格な祖父は大反対だったが
帰国後、そんな経験を基に「よりどころになれる開かれた寺にしたい」と、イベントなどで人を集めようと親族や檀家(だんか)に提案した。新しい寺の在り方を応援する人もいれば、反対する人も。特に厳格な祖父は大反対だったが、高津さんの真剣な思いに、最後はうなずいてくれた。
季節の法要など伝統的な行事は大切に守りつつ、新しい取り組みに挑戦。中でも新月の日の「うつつ」は最大の催しだ。ミラーボールで本堂を照らし、DJが音楽を流すなど各種イベントでにぎわう。6日には音楽に乗せた詩の朗読があり、会場は盛り上がった。高津さんは「新月は終わりであり、始まりの日。再出発の日にみんなでうつつを抜かし、明日からの力を蓄えてほしい」と話す。
うつつ以外にも毎週水曜午後5時から、本堂脇の庫裏で古着店やカフェは営業する。「うつつで知り合った人が、高齢の両親や法事について相談してくることも増えた」と高津さん。時代が変わっても、気軽に相談できる身近な場であり続けたいと願っている。