米不足で露呈した「日本の農政」の異様さ…「日本の米に未来はない」と専門家が断言する、衝撃の理由
今年8月、日本各地のスーパーから米が姿を消した。入荷をしてもすぐに売り切れ、さらに価格も大きく高騰。「いつも当たり前にあるはず」のお米が無いことに、どことなく不安感を覚えた方も多くいたのではないのだろうか。新米が並びはじめて、元通りになったかと安心する一方で、“令和の米騒動”の原因を明らかにしなければ問題は繰り返されかねない。 【写真】ついに分かった! “令和の米騒動”の「ほんとうの原因」 東京大学大学院農学生命科学研究科特任教授で『世界で最初に飢えるのは日本 食の安全保障をどう守るか』など農業安全保障関連の多くの著作を持つ鈴木宣弘氏はその原因を政府が行う「減反政策」に求めたうえで、その政策により、多くの米農家が苦境に立たされていると説く。政府の政策が変わり、そして消費者の行動が変わらない限り、「日本の米」に未来はないーー鈴木氏がそう断言するのはなぜなのか。 取材・文/中島茂信
コメを作ってくれる人がいなくなったら……
「コメを食べないと落ち着きません」 東京大学 大学院特任教授の鈴木宣弘先生の生活には、コメが欠かせない。奥様の手料理で朝一膳。昼は仕事で抜くこともあるが、夜も一膳いただく。鈴木先生の大好きなコメが2024年の夏、ほぼ全国の小売店から消えた。10月になり、各地の新米が並び始め、“令和の米騒動”もひと段落。10月6日、記者の地元千葉県のスーパーでは、千葉県産新米コシヒカリが5キロ3580円。令和の米騒動前の、ほぼ倍になった。 けれど、鈴木先生は「全然高くない。もっと高くていい」と言い切る。コメ5キロは茶碗約80杯分。5キロ3580円なら茶碗1杯約44.8円。 「菓子パンと比べたら茶碗1杯50円でも高くありません」 消費者としては安いほうが有り難い。けれど、「コメを作ってくれる人がいなくなったら、高いのなんのとは言っていられなくなる」と鈴木先生は指摘する。
1993年に比べると、大騒ぎする状況ではなかった
昨夏の猛暑の影響で、一等米の比率が落ちたこと。コロナがほぼ終焉し、インバウンド需要が増えたこと。この2点が“令和の米騒動”の要因だと報じるメディアが目立った。けれど、この説に鈴木先生は異論を唱える。 「インバウンド需要が増えたところでせいぜい1%。2023年のコメの作況指数は、平年を100として101。減っていません」 まだ記憶に新しい1993年のコメ不足は、記録的な日照不足と冷夏が原因だった。 「あの年は作況指数が70ぐらいまで落ち込みました。それに比べれば、今年は大騒ぎするような状況ではありません」