むしろ一般道こそ使うべき胸部プロテクター 死亡事故分析がライダーの“誤解”を警告!!
プロテクター着用と非着用で、明暗を分ける結果が
それでも原付バイクなどの小排気量バイクで胸部プロテクターを装着するのは面倒だ、というライダーに、八木氏は危険認知速度ごとに着用と非着用で死者割合と重傷者割合を比較して、こう結論付けました。 「死者割合において、着用により危険認知速度40km/h以下で着用の効果が見られる。重傷者割合においても、危険認知速度40km/h以下で着用の効果が見られる」(八木氏)
危険認知速度70km/h以上の事故では、ヘルメットやプロテクターを着用していたとしても、身体が事故の衝撃に耐えることが難しくなってきます。それが、同40km/h以下の場合には、胸部プロテクターの衝撃吸収力が効果的に作用するため、非着用よりも身体への損傷を軽減できるわけです。 ライダーの体感で速度40km/h以下は、けして速くはありませんが、八木氏は、危険認知速度40km/h以下をこう説明します。 「出会頭事故で胸部損傷している原付1種の死者数は、全体の98%が危険認知速度40km/h以下で発生しています。重傷事故では97.1%を占めます。ここに含まれた運転者が胸部プロテクターを装着することで、死者及び重傷者の削減の可能性が示唆されます」 危険認知速度40km/h以下で発生した死者と重傷者を、車種別にした割合は以下の通りです(死者割合・重傷者割合)。 ■原付1種 98.0%・97.1% ■原付2種 56.9%・76.1% ■軽二輪 21.2%・61.4% ■小型二輪 10.6%・39.8% 衝突軽減ブレーキなど先進安全技術が進む四輪車と比較して、現状のバイクには乗員を技術で守る装備が充分ではありません。そのためライダー自らがヘルメットやプロテクターで被害軽減を図るしかありません。 四輪車乗車中との比較で「二輪車乗車中の死者割合は約3倍、死者・重傷者割合は約5倍」(八木氏)と、ライダーが装備で身を守る重要性を説きます。 なぜ胸部プロテクターの着用が重要なのか。八木氏は発表をこう締め括りました。 「バイク死亡・重傷事故は、バイクの前面で衝突することが多い。その場合、肋骨が折れて肺に突き刺さり呼吸困難に陥るなど二次的な要因で死に至ることが多く、胸部プロテクターの装着で、まずはそれを防ぐことができる。胸部プロテクターの着用率は少なく、着用率の向上で、死者と重傷者の削減の可能性は高い。万が一の事故に備えて、ちょい乗り時にも胸部プロテクターの着用を推奨したい」 胸部プロテクター着用の必要性を、実行に移す時かもしれません。
中島みなみ