動揺が続く東京株式市場:日本に政策対応の余地がないことが市場の不安を増幅
日本は市場安定化のための政策対応の余地が小さい
今後米国の金融市場の動揺が深まる場合、米連邦準備制度理事会(FRB)には、9月に0.5%あるいはそれ以上の利下げを行う、年内の会合で連続した利下げを行う、9月の会合を待たずに緊急会合で利下げを行う、など様々な選択肢がある。利下げ余地も5%以上ある。 しかし日本銀行には、利下げの余地はない。また、為替が引き続き円安水準にある中では、政府が円売り介入を通じて円高の流れに歯止めをかけ、株価の安定を図ることもできない。このように、日本では政策対応の余地がないことが、金融市場の不安を増幅し、他国と比べても市場の動揺を大きくさせている面もある。 今後も東京市場の動揺が続けば、日本銀行は先行きの追加利上げに慎重な姿勢に転じた、とのメッセージを市場に送る可能性があるだろう。それでも東京市場の動揺が収まらなければ、7月31日に決定したばかりの長期国債買い入れ減額計画を見直し、一時的に国債買い入れを増額する可能性もあるだろう。しかしそうした政策は、政策金利の引き下げと比べて市場安定化効果が限られる。 日本は、政策対応を通じて金融市場の安定を回復することは難しい。米国経済の先行き懸念の後退に期待するしかないだろう。ただし、米国経済の悪化懸念、景気後退懸念がさらに強まる方向となれば、円高・株安の連鎖は再度強まることになろう。 木内登英(野村総合研究所 エグゼクティブ・エコノミスト) --- この記事は、NRIウェブサイトの【木内登英のGlobal Economy & Policy Insight】(https://www.nri.com/jp/knowledge/blog)に掲載されたものです。
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