《曙vs.ボブ・サップ》格闘技が紅白歌合戦に勝った「伝説の4分間」があった…テレビ史を塗り替えた「知られざる理由」
テレビ史を塗り替えた奇跡
そんな絢爛豪華な紅白の間隙を縫って、K‒1の視聴率が上回ったのだから、世間は驚いた。数字の動きを追うと、試合開始のゴングが鳴る直前の23時から、曙が仰向けに倒れてKOされた直後の23時3分までが「紅白超え」の4分間で、試合内容の優劣はともかくとして、敗れた曙太郎の奮闘が呼び起こした奇跡だった。かつての大横綱が、新たな世界に飛び立つ瞬間を全国民が注目した結果が如実に現れたのである。 後のことにも触れておく。K‒1に転向した曙太郎だが、10戦1勝9敗と戦績は振るわず、程なくプロレスに転向。水を得た魚のように大暴れするも病には勝てず、今春、鬼籍に入った。 しかし、彼が相撲協会に残っていれば、テレビ史を塗り替える奇跡は起きなかった。改めて、その決断の尊さを称えると同時に、彼の冥福を心から願わずにいられない。 12月19日発売の『格闘技が紅白に勝った日~2003年大晦日興行戦争の記録~』では、ここに紹介した'03年の一連の出来事を余すところなく詳述している。21年前の師走の記憶を甦らせながら、至高の「オールドメディア」にどっぷりと浸かろうではないか。 「週刊現代」2024年12月28・2025年1月4日号より 【つづきを読む】「あちゃーっ」予想だにしなかった1Rでの曙ダウン。日本中の視線が注がれた早すぎる決着【2003年 曙太郎vs.ボブ・サップ】
細田 昌志、週刊現代