BMSG POSSEが初単独公演で見せた美学とスタンス、「人生の伏線回収」が成された一夜
「とんかつラーメンとカツ丼」と表現した楽曲を披露
暗転し、あのイントロが鳴り始めると大歓声が湧く。「Cho Wavy De Gomenne」だ。JP THE WAVY、SALUがステージに上がった瞬間、SKY-HIはそれぞれを強く抱きしめた。久しぶりのリユニオンに、オーディエンスも目頭が熱くなり大きな拍手を送る。「Girlfriend -Remix-」でJP THE WAVY、Novel Core、SKY-HI、REIKO、edhiii boi、Aile The Shota、SALUとマイクリレーする景色は、SKY-HIにとって、居場所がなくてもがいてきた人生で出会った大事な仲間たちに囲まれながら、心を開いて遊ぶことができている「今」の喜びが溢れていた。しかも今年はSALUがフィーチャリングゲストとしてNovel Coreに声をかけたり、JP THE WAVYとAile The Shotaは師匠が同じだったりと、それぞれにとって「仲間」との輪が自然と広がっていることも、このステージに立っている人全員の人生を肯定しているようだった。SALUとJP THE WAVYは、「これでお別れなのもなんだから」というSKY-HIのフリから、BMSG POSSEのメンバーもステージに残ったまま「Good Vibes Only」を歌い届けた。SKY-HIは、SALUがステージにいない時にも、SALUという「長い友達」がヒップホップシーンに戻ってきたことを祝し、「ASIAN CINEMA Remix」の歌詞の一部をピックアップしながら、彼と共演できたことの喜びと自身のラップに対するさらなる意欲を見せていた。また終演後には、BMSG自社ビルにJP THE WAVY、SALUを招いて撮影した「Girlfriend -Remix-」のミュージックビデオが公開された。 「俺らも混ぜてくれよー!」。SALUとJP THE WAVYと入れ替わりで登場したのは、梅田サイファーよりKennyDoes、テークエム、peko。「Rodeo13」で豊洲PITの空気を掌握したあと、3人もジョインしSKY-HIも新たなヴァースを加えた「MINNA BLING BLING -Remix-」を初披露。凄まじい迫力と熱量で駆け抜けたこの曲の重厚感を、SKY-HIは笑いまじりに「とんかつラーメンとカツ丼」と表現した。 SKY-HIがpekoに「朝4時の渋谷Familyと変わらないノリを豊洲PITでやってる」と話した場面も象徴的だが、この日のステージには、諦めることなく歩み続けた先で、どんな過去も、明るい今へと変えることができた人たちの人生が表れていた。「やり残したことや後悔したことがあるやつは安心しろ! それ、回収するためにある伏線みたいなものだから!」というSKY-HIの言葉に、深く頷いていたのは、BE:FIRSTを輩出したオーディション『THE FIRST』に参加し、そこでの悔しい想いをソロデビューの切符へと変えたedhiii boi。「1日でも早く光を浴びる日がほしいなと思ってオーディションを受けて、気づいたら豊洲PITまで来て……ひとりぼっちの夜がどんどんなくなっていって幸せです!」とedhiii boiらしい言葉を残す。「Brave Generation -BMSG United Remix-」から続けた「SOBER ROCK -Remix- feat. SKY-HI」のアウトロでは、REIKOもAile The Shotaも『THE FIRST』に参加していたことを振り返り、Aile The Shotaは「人生楽しいです!」とシャウト。「何かあっても諦めるなよ、俺も諦めてないから」というSKY-HIにも、まだまだ回収すべき人生の伏線があるようだ。そして「OVERDRIVE」で、それぞれの人生観をビートに乗せながら、この先の道も突っ走っていく意気込みを表現し、聴き手の人生にもエールを送った。 「WE ARE BMSG POSSE! ありがとうございました!」という挨拶があり、ここで終わりかと思わせて、最後に投下したのはAile The Shota「Villains -Remix-」。これはもともとAile The Shota、Novel Core、edhiii boiが参加している楽曲で、REIKOとSKY-HIもジョインしたBMSG POSSEバージョンの発表が待ち望まれていた。BMSG POSSEはそれぞれにとって新たな引き出しを開く場になっているが、この曲では、REIKOがこれまで見せたことないダークな側面や聴かせたことのないフロウが開花。《我ら美学持ったVillains》と、美学を貫きながら世の中のシステムをひっくり返していくBMSG POSSEのスタンスを見せて、初の単独公演は幕を閉じた。 テキスト:矢島由佳子
Rolling Stone Japan 編集部