【ひねもすのたりワゴン生活】滋賀から城崎、そして神戸 5日間1500㎞のクルマ旅 その12
出石へは、円山川沿いに伸びる円山川リバーサイドラインで向かうことになった。これは兵庫県道3号線や国道312号線など同川沿いを走る道路の総称で、カーブやアップダウンも少なく、川に沿った美しい風景を愛でながらドライブを楽しむことができる。約20㎞、1時間弱で到着した。 そこは、きれいに道路が交差する典型的な城下町だった。昨今の観光人気に呼応してか、観光客向けの店も多いが、全体としては素朴ですっきりとした街並みである。お目当ての蕎麦店に向かうと、かなり離れたところからでも目に入るほどの人だかり…。人気店はネットで検索され、大混雑らしい。2、3軒回ったけれど、名の知れたところはどこも店の前はごった返しで同じようなものだった。そうでないところは呼び込みが煩わしいし、困ったものである。順番待ちで無駄な時間は費やしたくないし、これだけの軒数があるのだからほかにも美味しいところはあるはず…と、ちょっと意地になって歩き回ってみたら、呼び込みもおらず、それとなく老舗感のある一軒にたどり着いた。 出石で人気の観光スポット、辰鼓楼のすぐ脇だし、結構な大店だし…と、一瞬不安が過ったが(笑)、中から目が合った店員の笑顔が自然で、軽く会釈された頃には店に入っていた。この店は、平成22年10月に秋篠宮殿下・紀子妃殿のご来臨を賜ったようで、その光景を伝える写真が掲げられていたけれど、他の設えは仰々しくなく、好感が持てた。
さて、ここで出石蕎麦の背景にちょっと触れておこう。江戸時代中期の宝永3年(1706年)に出石藩主松平氏と信州上田藩の仙石政明がお国替えとなり、仙石氏が信州から伴ってきた蕎麦職人の技術が導入され、生まれたのだという。 特徴のひとつが出石焼の小皿に盛られることで、屋台で便利だったことから、幕末の頃にこのスタイルが広まったと伝えられている。現在では、5枚一組を一人前とし、徳利に入ったつゆと、ねぎ、わさび、卵、とろろ、大根おろしなどの薬味と共に供される。40軒ほどの蕎麦屋が腕を競っており、全国に名を知られるようになった。 私もそのベーシックな出石蕎麦を頼んでみた。5枚食べたあとは、1枚単位で追加できる。出石では箸を立てた高さまで皿を積むことができれば一人前の男として認められるらしいが、それはちょっと難しそう(笑)。