【都知事選のカオス】「けなし賃」「選挙はがき横流し」で金儲けしていた者も…ポスター掲示場ジャックよりもヤバい候補者の悪業
ネットの登場によって大きな変化が
しかし、NHK党によるポスター掲示枠の「販売」には、選挙制度を利用した過去の金儲けと大きく異なる性質があります。今までは少数の当事者間でこっそりと行われていたのに対し、NHK党は世間に対して大きく「販売」の宣伝を行うという、広く大衆を巻き込んだものだった点です。 選挙制度を利用しての金儲けは過去にも見られたことですが、このような手法はインターネットの発達で可能になりました。今回の「販売」はそういう意味では異色なものとなっているのです。 ただ、大衆に向けて宣伝しているのですから、大衆がこの行為を良いものと思わなければ、金儲けができなくなるということでもあります。事実、筆者はいくつかのポスター掲示場を見て、NHK党のサイトでポスター掲示場の受付状況を確認しましたが、「販売」が成約しているところは決して多くなく、想定よりうまくいっていない可能性があります。
都知事選が終わってからの見どころ
都知事選が終わってもまだ見どころは続きます。むしろ、その後の方がより重要と言えるかもしれません。まず考えられるのは、今回の都知事選に関して係争が行われる可能性です。 前述したように、一部の候補者のポスターはポスター掲示場に入りきらず、クリアファイルを使いポスター掲示場の板の端に画びょうなどで固定する方法を指示されました。ポスターがきちんと見えなくなるなど、他の候補者に比べてポスター掲示に著しく不利な状況となりました。このような候補者が、すべての候補者を平等に扱うべき選管から不平等に扱われたとして訴える可能性が考えられるのです。 もし、クリアファイルの候補者とクリアファイルではない当選者の票差がわずかだった場合、きちんとしたポスター掲示場所を用意してくれなかったので落選してしまったという異議の申し立てが有効とされる危険性があります。つまり、この都知事選は無効であり、もう1回選挙をやり直すという判決が裁判などで下される危険性を秘めているのです(ただし、票差が大きければ、選挙無効にならない可能性は高いですが)。 もう一つは、選挙のルールに何らかの変更が加えられる可能性が考えられます。前述したように今回の都知事選では、多数の候補者を擁立した政治団体に「寄付」をすればその候補者のポスター掲示場に寄付者が好きなポスターを貼ることができる、というポスター掲示枠の実質的販売が行われ、世論の批判も起きています。 また、別のある候補は選挙ポスターにほぼ脱衣した女性の画像を掲示し、これも激しい批判が起きたうえ、警視庁が迷惑防止条例違反として警告を発しました(ただ、これは警察が選挙活動に介入できるのかという問題もあります)。さらに今回の都知事選だけではなく、東京15区補選で逮捕者も出たつばさの党の他候補への妨害事件などから、選挙のルールに関する議論が出ることは確実な情勢です。 これから提案されるであろう選挙のルールの改正が、民主主義的によい形になるかどうか、全員が注視し、声を上げていく必要があります。 宮澤暁(みやざわ・さとる) 1984(昭和59)年東京都生まれ。東京理科大学理工学部卒業後、埼玉大学大学院理工学研究科博士前期課程修了。化学関連企業に勤務する傍ら、個性的な候補者や珍事件など変わったトピックスを扱う選挙マニアとして活動。Actin名義でブログや「選挙ドットコム」等に寄稿中。 デイリー新潮編集部
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