【都知事選のカオス】「けなし賃」「選挙はがき横流し」で金儲けしていた者も…ポスター掲示場ジャックよりもヤバい候補者の悪業
ポスター掲示枠の「販売」
すでにニュース等でも報じられている通り、ポスター掲示場の掲示枠の「販売」という信じられないことも起きています。 NHKから国民を守る党(以下、NHK党と表記)と関連する政治団体は、1人しか当選できない選挙なのにもかかわらず、24人もの候補者を擁立しました。そして、同党に一定の金額(6月24日現在では1口2万5000円)を寄付すれば、1口につき1か所のポスター掲示場で、NHK党および関連団体候補24人分の枠に好きなポスターを掲示可能としています。 選挙ポスターは、サイズや掲示責任者、印刷責任者の記載に関する規定があるものの、他候補の応援や虚偽内容でなければ基本的にポスターの内容に制限がないとされています。そのため、候補者とは無関係の内容のポスターを貼ることができるのです。 NHK党の行為は「寄付」の体裁をとっているものの、ポスター掲示枠の「販売」とみなされてもおかしくないものとなっています。都知事選に立候補するための供託金は300万円なので24人分で7200万円ですが、ポスター掲示場は都内に約1万4000か所あるので、それなりに「販売」できれば利益が上がるという算段です。 仮に1万4000口売れれば3億5000万円なので、供託金は十分にペイできます(ただし、赤字であっても、いくらかは金が得られるうえに、このことが話題になることで党の宣伝にもなるという算段もあると思います。また、同党はビジネスとして行っているのではなく、掲示場設置に税金を費やす無駄を示すためにこの手法を取ったと主張しています)。
昔の選挙もひどかった
このようなNHK党のやり方に、多くの批判が集まっています。 しかし、選挙制度を利用して金儲けをたくらんだ人が現れたのは今回が初めてではありません。拙著『ヤバい選挙』でも紹介しましたが、過去の選挙でも大きな問題になったことがありました。 わかりやすいやり方は、選挙妨害をツールとして使うというものです。悪質な候補者の中には、誰からも金をもらっていないのに狙いをつけた候補者Aの妨害を行い、やめる代償として候補者Aから金をせびり取り、さらには返す刀でその候補者の対立候補Bの妨害をするから「けなし賃」をよこせと提案する者すらいました。 1963年の東京都知事選では、この種の妨害が組織的かつ大規模に行われました。多数の右翼系候補が現職である自民党の陣営から資金提供を受けて立候補し、有力な対立候補だった革新統一候補が演説しようとすると、選挙カーから軍艦マーチを大音量で流したり、悪口を言ったりして演説の妨害を行いました。 他にも、かつては「自分には支持をしてくれるこれだけの票がある」と他候補に言い、立候補を辞退するから金をよこせと言って票を「売る」者もいました。 選挙公営制度を悪用した、この種の金儲けが大いに問題になったのは、1960年代でした。代表的なやり方としては、選挙管理委員会より交付されたさまざまな物品を横流しして金銭に替えてしまうというものがあります。 例えば、当時はポスター用紙が各候補者に交付されており、これを紙屋に売って金銭に替える候補者がいました。また、最も問題となったのは、選挙はがきの横流しでした。選挙はがきは現在もある制度で、各候補者は一定数のはがきを無料で有権者に送ることができます。そこで、候補者である自分に割り当てられた選挙はがきを、別の候補者に売る者が現れたのです。 他には、公費で新聞に掲載される選挙広告をめぐって広告代理店からリベートをもらうといった手法があげられます。選挙に立候補するための供託金はかなり高額で、参政権の観点から問題となっていますが、このように金儲けをたくらんだ人が多数いたことが高額化の一因となっています。